穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

7-3:「大量殺人のダークヒーロー」をながめる

2018-09-08 10:47:53 | 妊娠五か月

 せっかく麻耶が見つけてきてくれたんだ。覗いてみないと悪いだろうと手に取った。どうもいけない。奇想天外というか生硬な議論が続く。目次を見ると巻末に編集者がまとめた本書で論じられているという事件の要約がある。それによると本書で取り上げられている事件は17件である。横浜の少年がホームレスを襲った事件まで取り上げられている。取り上げた事件の取捨に疑問を感じさせる。それとも翻訳出版で日本というマーケットを意識した選択であろうか。

 アメリカの同時多発テロがあるかと思うとパリのシャルルエブド事件がある。学校の襲撃事件もある。場所はアメリカとパリ、それと意外だったのはフィンランドの事件が三つもある。フィンランドも銃社会のようだ。

  原因というか動機からいうとテロが多い。これは彼がいま考えているテーマと違うから読まない。またカウンター・テロリズムというか反イスラム、移民排斥を主張する事件もかなりある。そうかと思うと相模原事件のように優生思想をうたう者もある。そういう連中は何らかの形で自分の主張をどこかで表明している。これも対象外だ。なにしろ平敷が考えているのは動機が不明な大量殺人なのだ。

  恨みによる事件もある。いじめを恨んだらしいと推測される事件が一件あるようだ。これも脇においておこう。そこで動機不明の事件というのは無いのかな、と探すと二件あった。そこでこれらの事件について著者がどんなに深遠な哲学的議論をしているかと調べた。この本には索引がないから目次で見当をつけるしかないのだが、どうも原因不明の事件については言及は避けているようだ。なんだこれじゃ意味がない。

 取り上げられている17件の事件のうちには、家の前にいる覆面の不審者を撃ったという事件まで上げている。殺したのは自分の息子だったという。死者は息子一人。これが大量殺人のダークヒーローなのかね。分析されるべきは著者自身ではないのか。こんなことはアメリカではままあることではないか。日本人の留学生がハロウィンの仮装をして家の前に現れたら撃ち殺されたというのと同種の間違いの殺人ではないのか。深刻ぶった本のわりには抜けたところがある。ま、暇なときに取っておいて後で読んでみることにしよう。

 

 


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