オレンジ。

最初の大きな地震が起きた日。
仕事を放り投げようやく連絡が取れたうさ坊パパと
会社から歩いて帰ることにした。

うさ坊パパは小伝馬町から、
うさ坊ママは麹町から、
とりあえず飯田橋で合流することに。
（ってかゴールは埼玉だぜ？！）

人ごみをかき分けやっとの思いで
うさ坊パパと合流し感動の涙のあと、
飯田橋から池袋に向かう。
その途中、人生の先輩たちが集いそうな靴屋さんを発見。
ガラス扉の中には茶、黒、グレー、エンジ、オレンジの靴が並ぶ。
オレンジ。オレンジ？
一足だけ光り輝いて見えた。サイズもＯＫ。
「これはすごく軽くて、しかもＨＥＡＤっていうブランド！
千円引くよ！」
未だかつてない盛況ぶりでハイテンションのおじさんに
こちらもテンションあげあげで、そのまま履いて店を出る。
「ＨＥＡＤ？まあいいか」
今まで履いていたお気に入りのブーツは
元々かかとがボロになっていたが本当に気に入っていたため
いくら同じものが半額セールになっていてもなかなか踏ん切りがつかなかったが、
テンションあげあげのまま、ブーツに感謝してお別れをした。



翌々日に届いた同じデザインの新調ブーツと
池袋手前で光り輝いていたオレンジＨＥＡＤ。

池袋まで来るとさすがに寒さが身にしみる。
というか関節が痛い。
途中立ち寄ったスーパーでオレンジパッケージのカイロを見つけ
体中に貼りまくる。
スーパー、コンビニに並ぶ商品はすでに品薄だった。

目の当たりにする現実に落胆するも足は輝く。

板橋まで来ると地下鉄が動いてると聞くじゃないか。
板橋から後楽園まで戻ることにした。
後楽園から浦和御園まで地下鉄で行く作戦。
地下鉄の中は入場制限がかけられ、ねずみん家のアトラクションに
余裕で乗れるよ、この待ち時間ってレベル。
すでに日付は変わり、2時近く。
ようやく着いた浦和美園駅では被災用毛布が配られていた。
地図も貰ってそこからマンションまで約１０キロ。
これまた美園駅ってのは、昼間だったらさぞいい景色だろうなってくらい
見晴らしのいい場所にあることあること。
被災用のオレンジ色毛布をかぶりながら歩き続けた。

歩きながら何度も思う。
これって夢？いや現実だよね。

でも不思議なもんだね。
坊が家で待っている。うさ坊パパもいる。
恐いことなんてまったくなくて、家族がみんな無事なだけ
これだけで生きるパワーがわいてくる。
毛布のおかげもあるけれど、心があったかくて、
手を繋げばオレンジ色の安心感。

なんて幸せなんだろう。
心から思った。

明け方5時半。無事帰宅。
ビール片手にニュースを見て
いろんな意味での興奮が治まらず。


坊はリンゴをおねだり中。

まとめ買いは控え、必要最低限の食料、防寒具、キャンプ道具、
坊のご飯などをツーリングバッグに詰めて
被災用毛布とメットと一緒に和室に完備。


だけどね、たとえ完全な避難用具を完備できたとしても
家族が一緒じゃなくちゃ、一人じゃなんもできないんだ。
飯田橋駅までの道のりで迷子になって
もう泣いちゃうんだもん。

日本は今、とっても最悪な状態だけど
一人ぼっちになっちゃうって不安は実際、あるかもしれないけど
どこかで繋がってることだけはきっと事実で
間接的かもしれないけれど、今、自分にできることを考え行動したい。

いつか日本全体が
オレンジ色の毛布に包まれたようなあったかい中で
みんなが一緒にほっとできる日が必ず来ると信じる。