スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

宮廷人&複合の無限連鎖

2014-08-01 19:06:49 | 哲学
 『宮廷人と異端者』という本のタイトルに接したとき,異端者がスピノザを指示するということは,僕にはすぐに分かりました。スピノザの哲学,ないしはスピノザの人生に少しでも触れたことがあるなら,僕と同様に異端者をスピノザと容易に結び付けられる筈だと思います。一方,この本はライプニッツGottfried Wilhelm Leibnizとスピノザに焦点を照らした内容ですから,もう一方の宮廷人というのが,ライプニッツを指示しているのであろうことも,直ちに僕には理解できました。でも,スピノザが異端者といわれる理由は僕には分かっていましたが,なぜライプニッツが宮廷人といわれなければならないのかは,僕はこの本を読むまで知らなかったのです。
                         
 ライプニッツは1666年にニュールンベルクの大学に入学。翌年に法学博士号を取得。教授職への就任の要請を断り,錬金術師協会の理事に就任。その同僚にドイツのマインツ選帝侯を紹介してもらい,これ以降は基本的に宮廷で暮らしました。1672年にはパリに出て,本当はパリで別のパトロンを見つけて骨を埋めたかったようですが,1676年にはパリを去ることになります。
 これから分かるように,ライプニッツは原則的に宮廷サロンの意向に沿うような形で仕事をしました。それに背けば自分が生活していくための収入を得ることができなかったからです。この本を読んでライプニッツがあまりに多方面の仕事に手を出していたことに僕は驚きましたが,ライプニッツにとっては哲学もその仕事のひとつであったといえます。宮廷は当然ながら親キリスト教的であり,ですからライプニッツにとって,その規範を逸脱することはタブーでした。要するにライプニッツにとっての哲学は,それを守るための手段のようなものという一面があったのです。同時にそれは,自分の生活を守っていくための手段でもあったのです。
 ライプニッツが宮廷人という位置づけである以上,彼は本当に自分が真理veritasであると考えたことを哲学として述べたと理解するのは危険性が伴います。真理の発見よりもライプニッツにとっては重要なことが,ほかにあったと考えられるからです。

 ある何らかの複合した個物res singularisが存在するだけでは,スピノザが複合した個体を一般的にres singularisであるとみなすのには十分であるとはいえません。なぜならこのことのうちには,他のres singularisと協同して複合したres singularisを構成しないようなres singularisが存在するということが排除されていないからです。これを排除するためには,任意に抽出されたどんなres singularisも,ほかのres singularisと組み合わさってより複雑な単一のres singularisを構成するということが,第二部定義七の隠れた前提の条件になっていなければなりません。
 以上が僕が導出した結論です。しかし一方でこの結論は,僕を困惑させるようなものでした。これを前提にするなら,次のようなことが帰結することが避けられないと考えられたからです。
 仮にあるres singularisとして,Aを抽出してみましょう。このAはほかのres singularis,たとえばBと協同することにより,自身より複雑なCという個体を形成します。そしてこのCもres singularisです。これは現実的に考えればあまりに単純な例にすぎることを僕は認めます。ただ,ここでは論理を構築することを目指しているので,この最も単純な例を使用します。
 Cというのもres singularisである以上,最初に任意に抽出されるres singularisとなり得る存在です。つまりCもほかのres singularis,たとえばDと協同して,さらに複雑な個体であるEを構成しなければならないことになります。しかしこうして構成されるEもまたres singularisなのです。
 ここまでいえば何が帰結されるかは明瞭でしょう。この関係は無際限indefinitumに続くことになります。スピノザのように記述するなら,次のようになると思います。
 任意に抽出されるどんなres singularisも,他のres singularisと協同してより複雑なres singularisを構成する。そうして構成されたres singularisもさらにほかのres singularisと協同してより複雑なres singularisを構成する。このようにして無限に進むet sic in infinitum。
コメント
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