スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

叡王戦&ゲーテ『親和力』における「倫理的なもの」

2018-04-17 19:07:13 | 将棋
 14日に名古屋城で指された第3期叡王戦七番勝負第一局。金井恒太六段と高見泰地六段は公式戦初対局。
 事前に振駒で先手に決まっていた金井六段は持時間5時間を選択。後手の高見六段の横歩取りに先手が青野流で対抗する将棋に。
                                     
 後手が5二の玉を早逃げした局面。ここから先手は後手の飛車を取りにいったのですが,後の展開からするとこれが失着で,とりあえず☗2二龍と銀取りに入って後手に受けさせておくべきだったのだろうと思われます。
 実戦は第1図から☗7五金と打ち☖5四飛☗6五金☖5五飛☗同金の飛車角交換に持ち込みました。しかし☖7四桂が厳しい手。このときに先手の龍が2三にいるのがマイナス要素になっています。
                                     
 感想戦の感じだとここで先手は諦めたようで☗6五桂と攻め合いにいきました。ただこの手はぬるい手なので,苦しくてもとりあえず☗7五銀と逃げておいて,手数だけは伸ばしにいくという指し方をする棋士もいるのではないかと思います。こういうのは個人の性格にもよりますが,ちょっと淡白な気もしました。
 ☖8九角に☗7九飛と受けるのもおそらく負けを早める手だったと思いますが,これは自分が負けということが分かりやすい局面に誘導するサービスだったかもしれません。
 ☖7八角成☗同飛☖8九角☗7七飛☖6六桂☗同歩☖5七桂成。後手としては気持ちの良い手順の連続で王手龍取りが掛かり,先手の投了となりました。
                                     
 高見六段が先勝。第二局は28日です。

 『ゲーテとスピノザ主義』と関連する論考もこれで終了ですが,関連した書籍を紹介しておきます。
 僕は僕がいう汎神論論争に対する興味から『ゲーテとスピノザ主義』を読んだのですが,この本は僕が思っていたほどそのことに触れられていません。汎神論論争についてもう少し詳しく知りたいのであれば,中井真之の『ゲーテ『親和力』における「倫理的なもの」』をお勧めします。
                                     
 この本は題名からするとゲーテJohann Wolfgang von Goetheの自然科学の概念のひとつである親和力に関する研究書というイメージを抱かれるのではないかと思います。実際にそのイメージは間違いではありません。中井の探求の中心は,親和力は自然科学の概念でありながら倫理的な色彩も帯びていて,その倫理的色彩にスピノザ哲学が影響を与えているということであるからです。ただこの本には「F・H・ヤコービの「スピノザ主義批判」との関連において」という副題が与えられています。もしこの副題がなかったら,僕はこの本を手に取ることもなかったかもしれません。そしてこの副題から分かるように,ゲーテとヤコービFriedrich Heinrich Jaobiのやり取り,すなわち僕がいう汎神論論争の一部についてもその中に取り上げられているのです。
 内容は二部構成になっています。親和力に関する研究は主に第二部でなされています。この部分は自然科学に対する知識がある程度は必要とされるもので,僕はゲーテの自然科学そのものに関心があるわけではありませんから,内容の是非について何かをいうことはできません。ただ中井はここにスピノザの哲学の影響があるとみているので,スピノザの哲学と関連した考察はこちらの部分にも含まれています。
 第一部の方はゲーテにおけるスピノザの受容に関する論考で,親和力に関する論考のための前提になっています。このとき,『ゲーテとスピノザ主義』ではゲーテのスピノザ受容が多角的に考察されているのですが,中井の論考ではそのほとんどが汎神論論争と関連していて,メンデルスゾーンMoses Mendelssohnが何をいい,またヤコービが何をいい,ゲーテが何をいったのかが,ずっと詳しく紹介されているのです。なので汎神論論争に限定すれば,こちらを読む方が有益でしょう。
コメント
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