スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

不利な状況&設問の主旨

2021-09-04 19:01:50 | 将棋トピック
 三浦九段に不自然な離席があったということについては,僕は当時も今も同じように考えています。そしてこの点について,三浦九段に非があったと考えている点でも,当時と今とで僕の考えは変わりません。ただそうした不自然な離席に対して合理的な説明というものがそもそもあり得たのかという観点は,当時の僕には欠落していました。他面からいえば,僕は文字通りに三浦九段は身体を休めるために離席をしたのだと理解していましたし,それが離席の理由であれば,合理的な説明にはなっていないと調査した棋士たち,つまり将棋連盟の当時の執行部の棋士たちは判断したというように理解していたのです。吟味は当時の状況に沿って行われるものなので,とりあえずここでは当時の僕のその判断に沿った形で説明します。
 不自然な離席があったということと,それに対して納得させ得る説明をできなかったということは,三浦九段にとって不利な状況であると当時の僕は考えていました。さらにもう一点,その理由が何であれ,実際に処分が下されたということも,僕が当時の状況ですべてを判断するためには,三浦九段にとって不利な状況でした。なぜなら,処分を下すのであれば処分を下すだけの材料というものがなければならないので,実際に処分が下されたということになると,将棋連盟の執行部の側には何らかの証拠があるというように思われたからです。
 三浦九段にとって不利とみられる事柄は,僕にとっては以上の2点だけでした。しかし僕は,三浦九段がコンピューターによる援助を受けているということを否定するという考え方は変えませんでした。いい換えればこれらの2点は三浦九段にとって不利な材料ではあるけれども,僕が直観的に判断したこと,つまり三浦九段がそういうことをするのがきわめて非合理的なことをなすということである上に,それとは別の事情によって三浦九段が非合理的なことをするという蓋然性がそもそも低いので,実際に三浦九段は指し手の援助をコンピューターから受けていないという考え方を変更するには至らなかったのです。なぜこれらの材料が,僕の考え方を変更させることはなかったのかということを,これから詳細に説明していくことにします。

 僕は近藤の学習方法を,第二種の認識cognitio secundi generisを蓄積していくことによって,第三種の認識cognitio tertii generisが働くagereようになるという観点から重点的に説明しました。近藤がなした作業は,問題を読んだらすぐに答えを見て,その説明からいかにして答えが導かれるのかという解説を読んで理解するということでした。この作業の中で,第二種の認識の蓄積のために役立つのは,解説を読んで理解するという点にあります。というか,その点こそすべてであるといっても過言ではないでしょう。だから近藤の学習方法のうち,最も重要なのがその点にあるというのは間違いありません。しかしそれがすべてであるかといえば,僕はそうではないと考えます。それが僕の指摘しておきたい点です。僕の考えでは,問題を読むということも,重要なのです。ここでいう読むというのは,解説を読むというのと同じように,その意味を理解するということです。つまり僕は,問題を読んで理解すること,いい換えれば設問の主旨を理解するということも,第三種の認識でその設問を解答するために,重要な要素を構成する,少なくとも構成する場合があると考えているのです。近藤はそのことを意識していたかもしれませんが,それについては自覚的ではなかったかもしれません。なので僕からこれを指摘しておきたいのです。
                                        
 なぜ問題の意味を理解するということが,第三種の認識で設問に解答するために重要である場合があるのかといえば,たとえそれが数学の問題であったとしても,僕たちはその問題の意味を正しく理解するというだけで,とくに考えずとも直観的に答えることができる,つまり第二種の認識に頼らずとも第三種の認識で答えることができるという場合があると僕は考えているからです。そのために,ここではそういう実例をひとつあげることにしましょう。ただしこの実例にはふたつの条件が必要です。
 まず,設問それ自体は数学の問題でなければなりません。これは数学の問題の場合を実例とするのですから当然です。もうひとつは,第三種の認識は第二種の認識の蓄積によって生じるのですが.このときに蓄積される第二種の認識が,数学に関連するような知識であると意味がありません。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする