スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

将棋会館の移転&自分への憤慨

2022-04-09 19:14:03 | 将棋トピック
 女流棋戦の増設スポンサーの増加は,佐藤が新会長となってからの体制の実績といっていいでしょう。このほかにもうひとつ,この体制は大きな実績を残すことに成功しました。それが東西の将棋会館の移転に目途をつけたということです。
 将棋会館は東西,東京都内と大阪府内にあります。棋士は基本的に将棋会館で公式戦の対局を行いますから,これはプロ棋士にとって欠くべからざる建物だといえます。ただ,どちらの将棋会館も,建物が老朽化していたため,建て替えないしは移転が長年の懸案となっていたのです。この懸案の解決の目途を立てたのですから,これは確かに大きな実績なのです。
 長年の懸案だったのになかなか解決できなかったのはふたつの問題があったからです。ひとつは移転するのであればどこに移転するのかということであり,もうひとつは移転するにせよ建て替えるにせよ,その資金をどのように調達するのかということです。他面からいえば,懸案に目途を立てたというのは,このふたつの問題を解決したということです。
 東京将棋会館は,棋戦のスポンサーとなっている不動産会社の協力を得られることになりました。関西将棋会館は,将棋で町おこしをしようという自治体の協力が得られることになりました。これで移転先の問題は解決されました。資金に関しては,返礼品を用意しての寄付でその一部を賄うという方法を採用。これは継続中なので,完全に解決できたというわけではありませんが,少なくともこのような方法で資金の調達を目指すという方法を提案し,かつ実践したというのは,実績あるいは成果のひとつであるといっていいでしょう。
 もちろんこうしたことのすべてが可能になったのは,佐藤が会長になって体制が一新されたからだということに還元できるわけでなく,佐藤が会長に就任した頃から目に明らかな追い風が吹き始めたことを抜きには考えられないでしょう。ただ純粋になし得たことという観点だけでみるなら,今尾の将棋連盟の体制は,過去に類をみないほどの大きな仕事をした,あるいはしているといえるかもしれません。

 僕はもしも良心の呵責conscientiae morsusを感情affectusとして定義するのであれば,自身がなしたあるいはなすであろう害悪の観念ideaを原因causaとして伴った悲しみtristitiaとするのがいいのではないかといいました。この観点からいって,『エチカ』の第三部諸感情の定義の中で定義されている感情の中で,最もそれに近いのは,意外に思われるかもしれませんが,第三部諸感情の定義二〇の憤慨indignatioであると思います。この感情は,害悪の観念を原因として伴っているからです。この憤慨は,定義Definitioの中で直接的にそのようにいわれているわけではありませんが,他人に対して向かう感情です。それが自分自身に対して向かうと,良心の呵責ということになるのではないかと僕は思うのです。他面からいえば,良心の呵責というのは,自分自身に対して向かう憤慨であるといういい方が可能なのではないでしょうか。
                                      
 良心の呵責と憤慨の類似性をいうためには,スピノザの哲学の観点からひとつだけ注意しておきたいことがあります。憤慨は,憎しみodiumの一種として定義されていますが,憎しみは第三部諸感情の定義七から分かるように,悲しみの一種です。ですから,僕がいった良心の呵責も憤慨も,同じように悲しみであるという点では変わるところはありません。ただ,憎しみというのは外部の原因の観念 idea cause externaeを伴った悲しみのことをいうのであり,僕がいう良心の呵責は外部の原因の観念を伴っているわけではありません。伴っているのは自分がなしたあるいはなすであろう害悪なのですから,それは外部に対していえば内部だからです。ですからこの意味での良心の呵責は悲しみの一種であっても,憎しみの一種ではないのです。他面からいえば,憎しみというのは外部に向かう感情なので,内部には向かいません。つまり自分で自分を憎むということは,スピノザの哲学では語義矛盾となるのです。とはいえ,自分で自分を憎むというのは,文法的にはあるいは慣用的な表現としては成立します。ですから,僕がいう良心の呵責を,自分で自分を憎むことの一種であると理解しても,間違いであるというわけではありません。ただスピノザの哲学では,そのようないい方は成立しないのだということは,理解しておいてください。
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