スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

朝日杯将棋オープン&善意

2015-02-14 19:30:26 | 将棋
 有楽町朝日ホールで指された第8回朝日杯将棋オープンの決勝。午前の準決勝を勝ち上がった両者の対戦成績は羽生善治名人が30勝,渡辺明二冠が32勝。
 振駒で先手になった羽生名人の5筋位取り中飛車。渡辺二冠は穴熊を目指し,先手も潜り,双方が金銀4枚の相穴熊に。
                         
 先手が5筋を突き捨てて桂馬を跳ねた局面。後手は☖9五歩。これはほかに指す手が難しかったための選択ではなかったかと推測します。ここからは必然的に戦いに。
 ☗同歩☖同香は当然。すぐに角を切る手もあるでしょうが,実戦のように☗9六歩☖同香としてから☗3一角成の方が得のように思います。☖同金は普通の取り方でしょう。
 ここは岐路で☗9六香もあったでしょうが,すぐに☗5二銀と打ちました。
 後手も選択肢があり,☖5三飛☗4三銀成☖同飛といった展開も考えられるところでしたが☖9九香成としました。☗6三銀不成で一時的に大きな駒損になりますが,☖5五香で先手の飛車も逃げ場がありません。この手順は先手が☗9六歩と打ったのを咎められる可能性がある点が魅力的だと思います。
 ☗同飛☖同歩は当然。8二か8三に飛車を打つところで☗8二飛も当然といえるでしょう。後手は☖9三角打と繋ぎ,これも当然の☗8一飛成に☖7八飛と打ち込みました。
 たぶん後手が狙っていた反撃。対して☗7五香と打ちました。
                         
 ただなのですが☖同歩☗8五桂は後手が困りそう。したがって二枚の角が無能と化し,後手は歩で取れる香車を角と交換せざるを得ない展開に。どうやら第2図まで進んだ局面では先手がリードを奪っているといえそうです。
                         
 羽生名人が優勝。第3回,5回,7回と優勝していて朝日杯将棋オープンは連覇で4度目の優勝。通算でも前回のこの棋戦以来,43回目の棋戦優勝となっています。

 表象imaginatioであれ十全な認識cognitioであれ,神Deusを自由な存在existentiaと人が認識すれば,人はときに神に大きな愛amorを感じますが,場合によっては大きな憎しみodiumを感じてしまうということは,第三部定理四九から明らかだといえます。ですから単に現実世界の選択を神の自由の領域として措定するだけでは,ライプニッツGottfried Wilhelm Leibnizが哲学の目的とした,神学への貢献が図られるとはいえません。仮に多くの人が神を憎むようになるということであれば,むしろキリスト教を危機に晒す哲学であることになってしまうでしょう。
 だったら神の選択を必然的なものにすればよいかといえばそうではありません。それがライプニッツが考える人格の排除だからです。しかし結果effectusとして,人格の排除に徹したスピノザの哲学よりも,それを否定したライプニッツの哲学の方が神が憎まれるということになってしまうと,ライプニッツは明らかな失敗を犯したことになります。つまり神に人格を認めつつ,人びとがその神を信仰fidesの対象objectumとして崇めるような内容に自身の哲学を構築させなければ,ライプニッツの目的finisは達成できません。僕が現実世界の神による選択の方法を,ライプニッツは説明する必要があるといったのは,こうした理由からです。
 ここで折り合いをつけ得る方法としては,僕にはひとつしか思い浮かびません。それは神の自由な意志voluntas liberaによる選択が,最良の選択であると規定することです。いい換えれば,神の意志は単なる意志というよりは,善意とでもいうべきものによる選択であると規定することです。実際にライプニッツの規定はそのようになっていると僕は解します。確かに個々の事態を抽出すれば,神を憎みたくなるような事象は発生します。しかし世界を全体としてみれば,この現実世界が無限に多くのinfinita可能世界の中で,最善の世界であるというのが,それを簡略化した説明になろうかと思います。
 ここから,神はあらゆる可能世界の内部を知っているということが帰結します。しかしそれは真偽を知っているという意味ではないと僕は解します。だれにとって真偽不明かはここでも棚上げされていて,単に善意だけが現実世界の選択の規準になっていると僕は解しています。

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