大和の奇祭・・・奈良県桜井市江包(えっつみ)と大西(おおにし)に伝わる「御綱祭り」を紹介します。
9日、10日、11日の3日間にかけて準備と祭りを追いかけてみました。
今日は9.10日の準備の様子を中心に、明日は11日の「御綱祭り」の様子をお伝え致します。
この祭りは、「田遊び祭り」の一種で、奈良県指定無形民族文化財に指定されている「五穀豊穣」と「子孫繁栄」を願う農耕神事です。
昔、大洪水があって神様が上流から流れてこられたのを、大西では稲田姫(いなだひめ)、江包では素盞鳴命(すさのおのみこと)をお助けして祀ったのがはじまりです。
その後、毎年正月に結婚されるようになったのです。(和州祭礼記)
加えて洪水の時に、稲田姫が蛇(ジャ)になって川を渡られたので、それからこの行事をするようになったとも言い伝えられています。
祭りは2月11日 に行われますが、江包地区では前々日の9日から春日神社で「雄(男)綱」が作られます。また10日には、大西地区の市杵島神社で「雌(女)綱」が作られます。
この雄綱と雌(女)綱が、江包地区にある素盞鳴神社の神前で夫婦の契りを結ぶことになるのです。
この神事を「入船式(いりふねしき)」とも言われています。
ふたつの綱は、榎木(えのき)の老木に吊るされ、5月中頃までそのままに置かれるのです。
何しろ、この男綱の大きさは藁9束を芯にして、7
一方の女綱は、太い三つ網をよりに従ってなっていき、頭のほうを適当な長さに二つ折りにして巻きます。それを到着した素盞鳴神社境内の榎木に掛けたとき、舟形に開き、女性のモノの形にするのです。また他の一端は長くなっていき、100m程の尾となります。重さはこちらも約600kgになるのです。
昔から江包地区と大西地区では、両地区間では結婚しないことを定めているとか。これは神さんが結婚をされるので、氏子は遠慮するとか。昔この定を破って、縁組をしたが、破談になったといわれています。
9日の午後から、雄綱作りが行われている春日神社を訪ねると、15名ほどが雄(男)綱を作られていてほぼ出来あがりつつありました。確かにびっくりするほど大きい。
また、雄綱と雌綱が一緒になる春日神社からほど近い素盞鳴神社に両方の綱を架ける台作りの準備が行われていました。
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▲2/9 江包地区では「雄綱」が作られつつありました。重さ600kg。
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▲出来上がった「雄綱」です。2/11に持ち出されます。
10日の午後からは、雌(女)綱作りが行われている市杵島神社を訪ねました。
「よいとせ~ よいとせ~ よい、よい、よい」との掛け声で藁を編んで、直径5mほどの大きな舟形(女性のカタチ)を作られていきます。またその尻尾も直径20cm、長さは最終的には100mほどに伸ばされていきます。
総勢50名ほどの人たちが、それぞれの役割を担当されて手際よく作業をされていました。
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▲2/10 大西地区の「雌(女)綱」作りです。これはシッポの部分かな? 「よいとせ~ よいとせ~ よい、よい、よい」の掛け声で縄を編んで太くしていきます。
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▲区民総出の作業です。この日は平日のため、会社勤めの人はおられません。
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▲左:一本の縄から2本の捻じり縄を作る、特殊な道具が使われています。
右:この建物内で雌綱が作られています。こちらの掛け声も「よいとせ~ よいとせ~ よい、よい、よい」。次第に太くなっていきます。
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▲見ているほうも力が入ります。思わず「ヨイトセ~ ヨイトセ~、ヨイ、ヨイ、ヨイ」と叫んでしまいました。
右:シッポは100mにもなります。
▲この写真では、「雌(女)綱」とは分かりませんね。この半分くらいのところから二つに分かれ「舟形」になるのです。直径3mほど・・・。前日、江包地区に「雄(男)綱」の太さを聞きに行かれていたのです。
大西地区の雌(女)綱を担いで素盞鳴神社まで、神主さんと仲人さんが先導します。
ちょうど、昨年まで仲人役をされていた「喜田さん」に話を聞くことが出来ました。
聞くと、この喜田さんのご先祖が三輪から初瀬川を流れてきた神様を助けられたという。そのため、代々、この「お綱はんの結婚式」の仲人役を仰せつかっているとか。でも、今年は若手で親戚の「喜田さん」に譲るという。80歳を過ぎると体力的に辛くて・・・といわれていた。あくまでも「喜田家」が、この役をされていくのでしょう。
明治時代に一度、小さな雌(女)綱を作って盆に乗せて奉納したところ、村の女性に婦人病が流行って・・・「祟りだ」と大変だったため、以来この大きさにしているとか。
戦時中には男手が足りず、トラックに積んで運んだこともあったとか。また、せっかく作り上げた綱が深夜に燃えてしまって、徹夜して作り直したこともあったと、懐かしそうに話して頂いた。
貴重な話である。
明日は、11日の「御綱祭り」を紹介致します。