スターアニスの 『大和路 里の光彩』

アーカイブ中心の風景写真、趣味の書・刻字など・・いろいろと楽しんでおります。

錦の里・・・『正暦寺』

2009-09-17 11:22:33 | 出来事

国道169号を北に向かい窪之庄町交差点を東へ入る。ここは、奈良市内の南の端に位置する。
途中、「錦の里へようこそ」という看板が見える。 「錦」って? 
あとで気づくのだが、この「錦」とは・・・今回訪ねた「正暦寺(しょうりゃくじ)には楓樹が多く、全山紅葉に染められその鮮やかさを愛でて、古人が名づけたとか・・・。そういえば、訪ねた「福寿院」の軒下にも楓の苗木が販売されていた。

駐車場から参道を進むと「日本清酒発祥之地」なる石碑が立つ広場があった。
このお寺で室町時代に「濁り酒が清酒に改良された」とか・・。その建物跡だろうか、石碑の近くには礎石だけが置かれていた。

▲「日本酒発祥之地」の石碑。この周りには、酒蔵建物の礎石?が置かれていた。

先年、この地で、奈良県下14の酒造で作る清酒研究会が奈良県工業試験場とともに、地元産の「こしひかり」と乳酸菌から「酒母」を作ることに成功。
「酒母」は、各酒造に持ち帰り、独自の味付けをして地酒となっている。

この正暦寺は、992年に一条天皇の勅願で、関白の九条兼家(かねいえ)の子、兼俊けんしゅん)大僧正の創建によるもの。
かつて最盛期には86坊の堂塔伽藍が建ち並ぶ大寺であったが、平重衡の南都焼討の際全焼し、建保6年(1218年)信円僧正が真言密教・法相宗の教学禅定の道場として再興され、今は、本堂、鐘楼、福寿院を残すのみ。

▲本堂。かつて86坊の堂塔伽藍があったが・・・今は本堂、鐘楼、福寿院を残すのみ。

国指定重要文化財の1681年に建てられた「福寿院」には、「孔雀明王坐像」や狩野永納の襖絵「富獄」などがある。ここはカメラ持込み禁止のためもあり、今回は、時間の都合でパス。

さすが「楓の里」で、参道は楓樹がおおいかぶさり、隣を流れる菩提仙川の渓流が涼しさを演出してくれる。
今回の目的は、白壁に映える「サルスベリ」の花を撮りに来たのだが、既に遅し。「福寿院」前の巨木に咲く花は散ってしまっていた。

▲外から見る「福寿院」の白壁。残念ながら、サルスベリの花は終わっていた。中には入らず・・・ここの中庭が素晴らしいと、あとで知ったが・・・。残念! 紅葉の頃に訪ねたい。本堂に向かう石段の手前には、100体の石仏が並ぶ。


あきらめて本堂に向う。更に楓の緑色が濃くなる。苔むした石垣が往時の壮大さが偲ばれる。

観音の誓願にちなむ33段、阿弥陀にちなむ48段の石段の登り口には、建て縦列に100以上の石仏が並び、その両側には鎌倉時代の十三重塔が建っている。


▲紅葉の頃は綺麗だろうなぁ。

階段を登りつめたところに建つのが「鐘楼」。その周りのシュウメイギクはまだ蕾。掃除をされていたお寺の方は、「もう少しで咲きますよ。下の庭では咲いていますよ。」と教えて貰った。


▲鐘楼の周りに咲いていた「コムラサキ」と「シュウメイギク」。

本堂には国重文で秘仏の奈良時代の像高35cmの「金剛薬師如来倚像」がある。年に3回ほど観られるそうだ。
本堂の周りは広い。今は緑色の楓樹に囲まれ、ひっそりと佇む。紅葉の頃には多くの観光客が訪ねるのだろう。


▲本堂前には「サルスベリ」が残り少ない花を咲かせていた。


▲本堂横の池には「スイレンが」・・・収蔵庫の横には「ムクゲ」が・・・。


▲渓流の土手に咲く「シュウカイドウ」。福寿院の下にある庭で咲く「ギボウシ」。


▲咲いていた「シュウメイギク」。「ハナトラノオ」。


▲これは「ハナズオウ」の花と豆果だろうか。あまりにも太い木であったため・・・驚いた。


▲参道のいたるところに咲いていた「ヤブラン」と「ヒガンバナ」。


▲枯れている時、歯がないから「ウバユリ」・・。「フヨウ」も咲いてます。
他にも、「ナンテン」の実がたわわになっていた。この実も色付き、「錦」に色を加えるのだろう。


神仏習合の中で、鎮守や仏に献上するお酒を、荘園からあがる米を用いて僧侶が作る酒「僧坊酒」。
これを飲むから「錦色」に染まるのでは・・・なんて思ったりして・・・。

楓樹が色付く「錦の里」・・・秋が深まった頃に訪ねたいところです。

<さらに、近くの「弘仁寺(こうにんじ)」に向います。>


戒長寺の梵鐘と天然記念物の木々

2009-09-15 20:44:22 | 出来事

昨日の続きです。

奈良県宇陀市榛原区戒場にある『戒長寺(かいちょうじ)』に来ています。
訪ねたこの日は、境内に誰も居られず、虫の鳴き声だけが響いています。
観光客で賑わうところより、こんなお寺のほうが好きなんです。

▲味わいのある石段です。数えると151段もありました。

<十二神将像が鐘身に浮彫>
151段の石段を登りきったところにある鐘楼門には、形の美しい梵鐘が吊り下げられている。
縦帯部分に、正応4年(1291年)の銘があるから、700年以上前のもので、重要文化財なのです。
梵鐘の周りを4つに分けた部分に、3人づつの神将の立像が浮彫に鋳造されている。
だいたい十二神将をこのような形で表わしているのは珍しいそうだ。
人々の生まれ年の干支(えと)と十二神将とは何らかの関連はあるのだろうが・・・詳しくは知らない。恐らく十二神将とその人の生まれ年を関連付けて「守り神」としてきたのだろうか?

▲鐘楼門。階段の反対側から撮ったもの。

▲国の重要文化財である梵鐘です。718年前の銘があります。

▲4つのブロックに分けられて浮彫に鋳造されている十二神将像。私達の生まれた干支の守り神かな?

<本堂・・・9体の藤原仏が護る>
本堂に安置されているのは「薬師如来」。藤原時代には地方の戒律道場として隆盛を極めたお寺で、9体の藤原仏を伝来していることからもわかる。戒場薬師と称する古刹なのです。
昨今の仏像盗難被害からか鍵が掛けられ、中の諸仏を見ることは出来ない。
静かな佇まいではあるが、自然体で気品ある本堂である。

▲本堂には薬師如来が安置されている。綺麗な佇まいだ。今日は、扉が閉じられていて見れない。
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<県指定天然記念物の『お葉つきイチョウ』>
鐘楼門の右側に幹周り4m、樹高30mの『お葉つき銀杏』の大木がある。
シダ類が種子をその葉につけるのと同じように、この銀杏も葉に種子をつけると案内板に書かれていた。
枝先に実っている実があったが、葉っぱの付け根に実が成っていたが・・・これがそうだろうか?
秋には黄色に色付いた葉が見事に敷き詰められるのだろう。
奈良県内では他に、曽爾村、下市町、桜井市の3箇所に、同種の巨木がある。

▲鐘楼門の隣にある「お葉つき銀杏」。

▲見事な乳です。あまりにも大きすぎて、全体の樹形が写せません。

▲葉っぱの付け根に実がなっています。これが「お葉つき銀杏」なのでしょうか?一般的な銀杏とはどのように違うのか・・・。何処かの銀杏を見に行かなければ・・・。

<戒場神社の県指定天然記念物『ホオノキ(朴の木)』>
先ほどの戒長寺に隣接する「戒場神社」には、新日本名木百選にも選ばれた「ホオノキ (朴)の木」があります。
この木は、モクレン科に属する日本特産の落葉高木。大きな葉には殺菌作用があるため、餅などを包んだ朴葉焼きや朴葉味噌としても使われている。
根元は空洞になっていて、幹周りは6.2m。樹齢は300年とされている。
ホオノキには巨樹は少なく、「戒場神社のホオノキ」は日本一の幹周りとか・・・。
幹から芽吹いた小枝から30cmほどの大きな葉を広げていた。

▲樹齢300年と言われる「ホオノキ (朴)の木」。新日本名木100選にも選ばれているとか・・・。

▲何しろ幹周り6mの巨木だ。この木も大きすぎてカメラに収まりきれないのだ。

<境内に咲く花>
趣きある石段の周りは、アジサイ。アジサイが咲く頃の151段は見事だろう。また、石段の隙間からはヒガンバナが芽を出し始めている。
昨日、紹介した夏の主役を務めた「シュウカイドウ(秋海棠)」もいよいよ終わり。
他の季節の主役達は、アチコチで準備をし始めています。アジサイが、ヒガンバナが・・・。
日陰のところにはヤブランが・・・、ホトトギスが・・・、ウバユリが・・・、シュウメイギクが・・・、ウメモドキの赤い実が・・・。境内を行ったりきたりして・・・花を探すのも楽しいものです。

▲石段に咲く「秋明菊(シュウメイギク)」。境内の至る所で咲き始めています。

▲「彼岸花」も咲き始めました。

▲「ヤブラン」です。ちょっと濃いめの紫色です。

▲「ミズヒキ」も・・・。

▲「ホトトギス」も・・・。

▲「ウメモドキ」です。


▲昨日、いっぱい載せました「秋海棠」です。もう暫く楽しめます。


<大和富士(井岳)を臨む>
標高600mにある戒長寺。降りる途中、無人の野菜販売所のお婆ちゃんに尋ねると、西側に見える山が「額井岳」別名「大和富士」とか・・・。
いつも東名阪道・針ICに向かう時に見る、富士の山とはちょっと違う。反対側からだと富士には見えない。

▲この山が「大和富士」と言われている「額井岳」なのかなぁ?西陽で逆光となってます。


戒長寺の秋海棠

2009-09-14 23:21:59 | 出来事
宇陀市榛原区戒場にある『戒長寺(かいちょうじ)』を訪ねた。
国道165号の榛原から室生に向う山辺交差点から北側2キロにある。
大和富士と呼ばれる額井岳(816m)の東、戒場山(737m)の中腹の高台に位置している。
寺の創立や沿革は明らかでなく、寺伝によると聖徳太子が建立し、弘法大師が修業したと伝えられている。

咲き始めた彼岸花と、紫陽花の葉に囲まれた151段の石段を登ると、鐘楼門が迎えてくれる。この鐘楼門に吊り下げられている梵鐘が凄い、というか珍しいのだ。
正応4年(1291年)の銘があり、鐘身に十二神将像が浮彫にされている。珍しい形式なのだ。

もちろん、本堂は江戸時代末期、元治元年(1864年)に建立されたもので、本尊薬師三尊像など平安時代の仏像がある。
無住ではなさそうだが、人の気配がなく、ひっそりした境内に聳える『お葉つき銀杏』や隣にある戒場神社の『ホオノキ』は、県指定の天然記念物なのだ。

今、境内のアチコチには、秋海棠(シュウカイドウ)が咲いている。
緑の葉っぱに淡いピンクの花が綺麗だ。何枚も撮った。
今日は、「秋海棠(シュウカイドウ)」を紹介します。


▲151段の石段の手前に咲くシュウカイドウ。上に見えるのは鐘楼門。

▲ちょっと遅かったのか・・・散り始めている花が多くて・・・。






明日は、境内に聳える県指定の天然記念物である『お葉つき銀杏』や、隣にある戒場神社の『ホオノキ』などを紹介します。


斑入り藪蘭(ヤブラン)・・・白と紫の花

2009-09-10 21:23:23 | 出来事

斑入り藪蘭(ヤブラン)の花が咲いている。白と紫色。
普通の藪蘭は、山裾で採ってきて既にグリーンの実が出来ている。
紫の花のほうは、これから咲くのだ。

藪蘭は、万葉集では「山菅(ヤマスゲ)」として14首ほど詠われているとか・・・。
でも山菅は、「蛇の髭(ジャノヒゲ)又は竜の髭(リュウノヒゲ)」とか「カンスゲ」という説もあるとか。どうもハッキリしないが・・・。

ぬばたまの 黒髪山の山菅に 小雨降りしきしくしく思ほゆ (柿本人麻呂)
<奈良・黒髪山の山菅(やますげ)に小雨が絶え間無く降るように、ずっーとあの人のことを思っています。>
この「山菅」は、ヤブランなのか竜のヒゲなのか・・??

この藪蘭の根の肥大した部分は、滋養強壮や鎮咳、去痰、強心利尿などの薬効があるとか・・・・。昔の人は、クスリとして重宝していたのだろう。

春蘭(シュンラン)や吉祥草(キチジョウソウ)の葉に似ており、また、丸い実が成ることも似ています。



<参考>

▲「春蘭」です。野生蘭の一つで東洋ランとして観賞用として人気があります。


吉隠(よなばり)の棚田

2009-09-08 17:15:40 | 出来事



ここは、桜井市吉隠(よなばり)。
「吉隠」をヨナバリと読める人は少ない。
大昔、「吉名張」と書いたときもあったとか・・・。
「万葉集」にも登場する地で、初瀬から榛原に向う国道165号沿いにある。

『 降る雪は あはにな降りそ 吉隠の猪養の岡の 寒からまくに 』
<穂積皇子(巻2-203)>

穂積皇子と但馬皇女の恋・・・皇女の死後、詠まれた歌だ。
「降る雪よ、そんなにたくさん降らないで。あの人の眠る猪養の岡が寒いから」
この近くに、猪養の岡・・・猪を放し飼いにしていたところがあったのだろう。
最近では、野生のイノシシが県内各地の畑を荒らしているが・・・この辺りも被害があるのだろう。

時々、車で通るところで、南側の棚田が美しいところだ。
まだ、緑が残る水田は、日に日に金色に輝いてくる。
もう少しで、収穫が始まる。