映像作品とクラシック音楽 第二回
「ウルトラセブン 史上最大の侵略」
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どうも
性懲りも無く第二回の投稿をさせていただきます、インディーズ映画監督でクラシック音楽好きの齋藤新です。
今回はウルトラセブンです!
セブン最終回で使用され印象深いのが、シューマンのピアノ協奏曲です。
もうこの曲はウルトラオタクの間ではレジェンド級で「シューマ…」まで言えば「アンヌ!僕はね!」と切り返してくるやばい世界が展開されるほどです!
このグループで浮きまくるのを覚悟で、ウルトラオタクっぷりあふれる投稿をしてみようと思います!!
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怪獣や宇宙人との死闘での疲労が積み重なり、体調がめちゃくちゃ悪くなったモロボシダン。脈拍360、血圧400、熱が90度というヤバすぎだろ!?その体調!!っていうか触った人は火傷しないのか?って状態のダンはウルトラ警備隊のメディカルセンターを脱走します。
居場所を突き止めて連れ戻しに来たアンヌ隊員にダンは正体を明かします。
「アンヌ、僕は…僕はね、人間じゃないんだよ!M78星雲から来たウルトラセブンなんだよ!」
するとシューマンの第一楽章の出だしのショッキングなピアノのところがかかり、ここからセブン・シューマン 劇場が始まります!
真夜中の屋外だったはずの場所は突然背景がギンギンキラキラの光の海みたいな場所になり二人の姿はシルエットになるという、幻想的映像に切り替わります。
この映像とシューマン がめちゃめちゃマッチしているんですね。
シューマン を選んだのは音楽担当の冬木透さんなのか?監督の満田かずほさんなのか、はたまた編集スタッフなのか?
「びっくりしただろう?」というダンに対するアンヌの返答はいつ聞いても泣けます!
「ううん、人間であろうと宇宙人であろうとダンはダンに変わりないじゃない。たとえウルトラセブンであっても」
そうですよね。アンヌはダンの本質を愛していたのです。
シューマンが流れるままに場面はウルトラ警備隊の基地に変わり、キリヤマ隊長が特殊爆弾を搭載した無人操縦のマグマライザーの発進を命令します。
すでにモスクワ、ニューヨーク、ロンドン、パリを灰にしたゴース星人の地下基地を特攻で消し飛ばすためですが、ゴース星人の基地にはウルトラ警備隊の一員であるアマギ隊員が捕虜and人質として囚われているのです!アマギには犠牲なってもらってかわりに世界を救おうという、キリヤマの苦渋の決断です。
地中を進むマグマライザーのバックに、激しさを増したシューマンが流れます。マグマライザーと囚われのアマギ隊員のカットバックがテンポよく繰り返され、そこにかかるシューマン が否が応でも緊迫感を高めます!
(念のため書きますと「マグマライザー」とは、ウルトラ警備隊の戦車で、巨大なドリルを車体前面に装備して地底を掘り進むこともできる兵器です。)
ここで音楽は一旦シューマン から、シリーズの作曲担当冬木透氏によるセブンテーマのアレンジに変わります。
そしてダンは「西の空に明けの明星が輝くころ、一つの光が宇宙に飛んでいく。それが僕なんだよ、さよならアンヌ」と言います。
明けの明星って金星?だったら東の空だよねという突っ込みはぐっと堪えてアンヌは「行かないで」と言うのですか、ダンは「アマギ隊員がピンチなんだよ!」と言って、すがりつくアンヌを乱暴に突き飛ばして(俺は今90度の熱があるんだ、触ったら火傷するぞ、と思って乱暴に突き飛ばしたのかもしれません。もっともメディカルセンターでアンヌはさんざんダンに触ってるんですが)、そしてダンはセブンに変身します。次に変身したら死ぬぞ!と「セブン上司」に警告されていたにもかかわらず…
音楽は冬木氏による悲壮感漂うアレンジのセブンテーマのまま、アマギ隊員救出のためゴース星人の基地に向かうセブン、地中を進むマグマライザー、囚われのアマギ隊員、などのモンタージュになります。
そしてセブンはゴース星人の基地の入り口である火山の噴火口に突入、基地内を飛びアマギ隊員を救出して脱出!同時にマグマライザーがゴース星人の基地に突入して自爆しゴース星人の地下基地は派手に大爆発。間一髪でセブンは脱出します。
そして音楽は一旦止まり、勝った…と思いきやゴース星人が最後の悪あがきで送り出した怪獣「改造パンドン」が疲労困憊で死にそうなセブンに襲いかかります。
パンドン登場でいつもならセブンピンチ曲でもかかるところを、シューマン がまたフェードインしてきて、悲壮感ある戦いをさらに盛り上げます。
アンヌはキリヤマらに打ち明けます。「ウルトラセブンの正体は私たちのダンだったのよ!」
ウルトラ警備隊の面々がパンドンにボコボコにされるセブンを見つめます。ここでもシューマン が鳴り続けます。
キリヤマがシューマンをバックにセブンに向かって「ダン!」と叫ぶ時も、思わず涙腺が緩みます。
キリヤマ「行こう!地球は我々人類自らの手で守り抜かねばならないんだ!」
3機に分離したホーク1号がセブンを援護します。しかしもう誰も彼をセブンとは呼びません。
「ダン!怪獣は俺にまかせろ!」
「モロボシ…ゆるしてくれ」
援護を得て最後の力を振り絞るようにセブンは渾身のアイスラッガーを放ちますが、改造パンドンはそれを片手で難なくキャッチ!
「こいつで逆にお前をぶった斬ってやろうか?あーん」と言わんばかりにアイスラッガーを持った手をユラユラ揺らしてセブンに近づくパンドンですが、そこにホーク1号が攻撃を加えることで出来た一瞬の隙をついてセブンはわずかに後方に飛んでパンドンと距離をとります。
距離を取られて焦ったパンドンはアイスラッガーをセブンめがけて投げつけますが、セブンはアイスラッガーを脳波コントロールで急激Uターンさせてパンドンに飛ばし返します。完全に虚をつかれたパンドンは今度はキャッチもよけることもできず、首をスッパリと落とされてしまいます。
突然のことに首を失ったことに気づいていないかのように首なしパンドンは2、3歩セブンに向けてまだ歩きますが、ついにこと切れてズズーーンと音を立てて倒れます。
この最後の闘いの間ずっと鳴り続けるシューマンは、セブンとパンドンの闘いを演出するというよりは、モロボシダンとウルトラ警備隊の面々との友情や絆を演出していたのでしょうか。
朝焼けのなか、ゆらりと立ち上がるセブンが、デュアーーッと声を出して空に飛び立つところでぴたりとシューマンのピアノ協奏曲第一楽章が終了するのです。
もうセブンの闘いをサポートしたシューマン はウルトラ兄弟の一人に加えたいくらいですね!ウルトラシューマン !
そして戦い終わり静かになった西の空を(ダンの予言通り明けの明星が輝く西の空を)ダン=セブンは宇宙に向けて飛んでいくのです。
ウルトラ警備隊の面々との、とりわけアンヌとの永遠の別れです。
色々と別の世界線では再会できたりするのですが。
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この回で使われたシューマンのピアノ協奏曲はというと、47年録音のカラヤン指揮、フィルハーモニア管の演奏で、ピアノはリパッティです。
「2001年」に続きまたカラヤンです。
「2001年」は1968年作品。セブン最終回放送も1968年で、奇しくも同じ年に二つの名作SFでカラヤンが使われているのです。
この頃のカラヤン人気はかなり絶大なものだったのでしょう。
セブンのシューマンとして有名な録音のアルバムは今でも購入できるのですが、モノラルだし、なんかちょっとお高めの値段設定なので、私は比較的お安く買える同じカラヤンでもBPOでツィメルマンのピアノの81年録音CDを買ってしまいました。
うーん、でもやっぱり…なんか違うんだよなあ…あの録音じゃないとダンとアンヌごっこやりにくいなあ…
…ってわけでいつかカラヤン×リパッティ版を買って冬木さんのサントラと混ぜたプレイリスト作って感動に浸ろうと思ってます!
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次回予告「アマデウス」