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映画ブロガーら有志23名による「10年代映画ベストテン」発表!

映像作品とクラシック音楽 第52回 ジェリー・ゴールドスミス 私的ベストテン(その一)

2022-02-03 09:23:00 | 映像作品とクラシック音楽
クラシック音楽が印象的な映像作品を紹介するという建前で続けて参りましたコーナーですが、初投稿が2021年の2月5日でほぼ週一で投稿を続けてなんとついに1周年を迎えようとしております。
今回は1周年を記念した特別企画として、建前を無視して映画音楽のお話をさせていただこうと思いますっていつものことですが。
今回取り上げるのは映画音楽の巨匠ジェリー・ゴールドスミスです。
一回で出すにはものすごく濃い記事になってしまったので、1周年記念日までカウントダウンで三連投させて頂こうとなどと思います。我慢してお付き合いいただけたら幸いです。


ジェリー・ゴールドスミス(1929-2004)は
アメリカの映画音楽の一つのスタイルを(ジョン・ウィリアムズと共に)完成させた人物と思っています。
ジョン・ウィリアムズは、90年代になんかの映画雑誌(キネ旬だったかな?)のインタビューで、現在活躍中のハリウッドの作曲家で気に入っている人は?という質問に、何人かの名前を上げた後で「でもなんと言ってもジェリーだよ。ジェリーが一番だ」みたいなことを語っていました。
ウィリアムズをしてそこまで言わせるゴールドスミスですが、アカデミー賞作曲賞のノミネート回数は17回、うち受賞1回です。
彼の才能とキャリアから考えると少ないくらいですが、なんでそんなに少ないかと言うと彼が映画音楽の仕事が好きすぎて80年代以降、巨匠のくせに仕事を選ばなさすぎたからだと思ってます。これはけなしているのではありません。賛辞です。
ゴールドスミスは70年代こそ超大作の箔付けのために作曲を依頼されることも多かったのですが、80年代くらいから、あらすじを聞くまでもなくタイトル観ただけで、あぁこれはビデオスルーな安っぽい映画だなとわかる作品や、どう考えても二番煎じな企画とか、勢いで作っただけの続編とかにも嬉々として音楽を作っていた感があります。

アカデミー賞というやつは、アメリカの映画制作の方々が中心になって選ぶ賞でして年間何百と映画を観まくる評論家やファンの選ぶ賞とは根本的に違います。映画制作に関わる人みんながそんなに映画を見まくっているはずはなく、ある程度評判になってる映画じゃないとどんなにいい仕事をしても票が集まらないのです。
ジョン・ウィリアムズなんかは本人が作品を選んでるわけじゃないかもしれませんが、依頼かける方が「うちらのようなB級映画に…」と忖度してしまい、自然と超大作やアカデミー賞狙いの名作が多くなるようです。
その点ゴールドスミスは依頼する方もハードルの低さを感じるのかもしれません。「おいおい『ザ・グリード』みたいなアホB級モンスター映画の音楽JWがやってくれるわけねーだろ。そういうのはJGに持ってけ!」ってなるのかどうか知りませんが、実際ゴールドスミスはジョン・ウィリアムズが間違っても手をつけないようなアホくさい映画にも沢山音楽をつけました。
モンスター映画、アクション映画、ホラー、ラブコメ、子供向け、エロティックサスペンス…
いや、あんた巨匠でしょ?!って思うような作品に次々と音楽を提供し、しかもどの作品でもめちゃくちゃ素晴らしい仕事をしているのです。(モリコーネにもバリーにもそういうところありましたけど、ゴールドスミスはさらに輪をかけていた感じです)
彼の遺作が、全然話題にならなかったファミリー映画で、アニメのバックスバニーが実写の人間と共演する映画「ルーニー・テューンズ:バック・イン・アクション」(2003)だったというのも何か彼の映画音楽家としての生き様を象徴しているような気がします。そしてこの音楽もまたすんばらしいのですが。

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随分前ですが、ゴールドスミス氏の来日コンサートに行きました。たしか1998年だったと思います。横浜みなとみらいでのコンサートで、演奏は神奈川フィルハーモニー管弦楽団、指揮はもちろんゴールドスミスでした。
スタートレック、パットン、ムーランなどの代表作のみならず、多分誰も知らないような作品の音楽…『ゴースト・アンド・ダークネス』とか『シャドウ』とかってわかります?私は知ってましたが、そんなマイナーな曲をアンコールで奏でる空気の読めなさが最高でした。それでも収まらない拍手にちょっと困ったなって顔してから多分予定になかったあの曲の再演と、その会場を巻き込んだすごい盛り上がり…クラシックのコンサートではそうそう体験できないあの楽しさ…につきましては後述のベストテン解説の中で書くことにします。

などと、前置きが長くなりましたがジェリー・ゴールドスミスの私的ベストテンを書いてみます。
超長文ですが、お付き合いいただけると幸いです。

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まず10位〜7位

第10位 勝利への旅立ち(1986)
第9位 チャイナタウン(1974)
第8位 LAコンフィデンシャル(1997)
第7位 エイリアン(1979)

【第10位 勝利への旅立ち(1986)】
とある田舎町の高校バスケ部のコーチに就任したジーン・ハックマンが激アツ指導で弱小チームを優勝へ導くスポ根映画です。
音楽は躍動感あふれる「熱い」というよりは「爽やか」系のスポーツ音楽。来日コンサートでもやはりスポーツ映画音楽の傑作『ルディ・涙のウィニングラン』との組曲として演奏されました。ランニングのBGMにとても良いスピード感ある楽曲群です。

【第9位 チャイナタウン(1974)】
ジャック・ニコルソン演じる私立探偵がLAの犯罪事件の裏の愛憎劇に翻弄されるハードボイルド映画の傑作です。これは私の生涯ベストテン映画入るくらい好きな作品なのでその贔屓もあるのですが、それでいてこの映画をそんなに愛してやまない理由のひとつがこの音楽にあります。
ハードボイルド映画にトランペットのソロをあわせるというのは考えてみるとこの映画でゴールドスミスが初めて成功させたのではないでしょうか?トランペットソロに続けてストリングスが同じメロディをなぞるそのシンプルな音楽はしかし聴くだけでラストのニコルソンの苦い顔を思い出して涙腺がゆるみます。

【第8位 LAコンフィデンシャル(1997)】
ゴールドスミス晩年期の傑作スコアです。映画もまた1950年代のLAを舞台にしたクライムサスペンスの傑作でアカデミー賞では作品賞にもノミネートされ、ゴールドスミスも作曲賞候補になりました。
チャイナタウンで自ら確立した「ハードボイルド とトランペット」の黄金律をさらに発展拡大させた壮大なスコアはいつ聴いても圧倒されます。

【第7位 エイリアン(1979)】
SFも守備範囲というかホームグラウンドだったゴールドスミスが、「SFホラー」というジャンルを確立させた傑作にも関わっています。「ホラー」もまたゴールドスミスの得意ジャンル。なんと言っても彼の唯一のアカデミー賞受賞作が『オーメン』ですから。
ゴールドスミスのホラー音楽はただショッキングなだけではなく、どこか高級感あふれ、恐ろしい割にメロディはキャッチーで、でもとにかく怖い!!
とは言え『エイリアン』のスコアを改めて聞くとその怖さ以上に美しさに心奪われます。
来日コンサートでも『エイリアン』のエンドタイトルテーマ曲が演奏されたのですが、この曲は映画本編では勝手に他人の曲に差し替えられ、使われなかったのです。
そういうのは映画音楽の世界ではよくあることとは言え、しかし本人的には思い入れのある曲らしく、コンサートでも自作品の再演アルバムでも度々演奏されます。
美しくも怖い旋律を情感たっぷりに演奏するのを聞くと、捨てられた楽曲への鎮魂歌のようにも聞こえます

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続けて6〜4位のエリアですが、長くなってきたので続きは次回ということで!
それではまた!素晴らしい音楽と映画でお会いしましょう!


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