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アカデミー賞特集・アカデミー賞に見る「女性映画」

2022-03-24 00:10:00 | 映画賞
もうすぐアカデミー賞です。
しばらく、アカデミー賞について、色々と調べて、考えて書いてみようと思います。

今年のアカデミー賞はジェーン・カンピオン監督の「パワー・オブ・ザ・ドッグ」が最有力と言われており、アカデミー賞史上3人目の女性の監督賞受賞になるのでは…と言われています。

女性のクリエイターが評価されるようになるのは歓迎すべきことだと思いますが、一方で主演女優賞候補を見まわして、気づいたことがあります。
今年のアカデミー賞主演女優賞候補5名の出演作は、ひとつも作品賞候補になっておりません。
主演男優賞候補はというと2作品が作品賞候補と重複しています。
主演女優と作品賞の相性の悪さは実は前々からなんとなく気になっていました。
そこで今回はデータをもとにアカデミー賞と女性映画の関係を少し紐解いてみたいと思います。

【主演女優賞と作品賞の連動性】
1980年(の授賞式)以降を対象に(つまり42回分のアカデミー賞を対象に)、アカデミー主演女優賞をとった作品が、作品賞受賞ないしはノミネートされた割合を調べてみました。

・作品賞と主演女優賞をダブル受賞した作品数 ⇒ 6 (「ノマドランド」「ミリオンダラーベイビー」など)
・主演女優賞受賞作品が、作品賞にノミネートされた数(上記受賞6作含む) ⇒  27 (「スリービルボード」「ラ・ラ・ランド」など)

割合でいうと
・主演女優賞受賞作の作品賞受賞率は、6/42 = 14%
・主演女優賞受賞作の作品賞ノミネート率は、27/42 = 64%

(文末【参考データ1】参照)

ちなみに同様のデータを主演男優賞受賞作で調べてみました
・作品賞と主演男優賞をダブル受賞した作品数 ⇒ 10  (10/42 = 24%)
・主演男優賞受賞作品が、作品賞にノミネートされた数(上記受賞作含む) ⇒  34 (34/42 = 81%)

(文末【参考データ2】参照)

やっぱりここにも男女の格差があるわけです。

なんでこんなことが起こるのでしょうか。
悪い言い方をすると、女優は演技の上手さや凄さで評価はされても、その心情や主張は共感されにくい…のかもしれません。
あるいは、監督が男ばっかりだから女性の心情や主張を説得力持って描くのが下手ということかもしれません
というかそもそも女性が主人公の映画で、アカデミー賞をとるくらい評価された映画ってどれくらいあるのだろう・・・と思ってさらに調べてみました。


【作品賞を受賞した「女性映画」】
まず、作品賞受賞作のうち、女性主人公の映画がどれくらいあるかです。ここでも1980年以降の42作品を調査対象にしました。
結論から言うと1980年以降、女性主人公の映画の作品賞受賞は11回しかありません。
(文末【参考データ3】参照)

1980年以降、アカデミー作品賞を受賞した女性主人公の映画
◎ノマドランド
〇シェイプオブウォーター
〇ミリオンダラーベイビー
◎シカゴ
〇恋に落ちたシェイクスピア
〇タイタニック
〇イングリッシュペイシェント
〇羊たちの沈黙
〇ドライビングミスデイジー
〇愛と哀しみの果て
◎愛と追憶の日々

〇は男女のペアが主人公の作品
◎は女性一人または女性のペアが主人公の作品

女性主人公とは言いましたが、「恋に落ちたシェイクスピア」はシェイクスピアありきだし、「羊たちの沈黙」はレクター博士の映画だし、「シェイプオブウォーター」は半魚人の映画ですよね。
作品賞受賞作の中で、女性だけが主人公の作品となると、◎をつけた3作品しかないように思います。
逆にこれら11作品以外の31回は男性または男性のペアやグループが主人公の映画です。

もっとも「主人公」か「脇役」かの判断は私の独断です
「クレイマークレイマー」や「アメリカンビューティ」は「夫」だけでなく「妻」も主人公と言えるかもしれません
あるいは「クラッシュ」のような群像劇は女性も主人公の一人と言えるかもしれません
ですがまあ、微妙なのはそれくらいで、それらを含めたとしても作品賞を受賞した映画のほとんどが「男性の映画」であることに変わりはないのです。
もし70年代までさかのぼっても(ちゃんと調べてませんが)女性映画としては「アニーホール」が増えるくらいでしょう。これだって女性映画ってよりウディ・アレン映画ですね。

いや、面白ければ男も女も関係ないのですが、実際ここまで圧倒的ともいえる男性映画偏重があるとは思ってなかったです。
女性の監督やスタッフが増えていくことで、こうした偏りが無くなっていくのかもしれないですね。

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【参考データ1】主演女優賞受賞作の作品賞ノミネート
◎⇒作品賞受賞 ⇒6作品
〇⇒作品賞ノミネート⇒21作品
×⇒作品賞にノミネートされず⇒15作品

2021 ◎ ノマドランド(フランシス・マクドーマンド)
2020 × ジュディ虹の彼方に(レネ・ゼルウィガー)
2019 〇 女王陛下のお気に入り(オリビア・コールマン)
2018 〇 スリービルボード(フランシス・マクドーマンド)
2017 〇 ラ・ラ・ランド(エマ・ストーン)
2016 〇 ルーム(ブリー・ラーソン)
2015 × アリスのままで(ジュリアン・ムーア)
2014 × ブルージャスミン(ケイト・ブランシェット)
2013 〇 世界に一つのプレイブック(ジェニファー・ローレンス)
2012 × マーガレットサッチャー(メリル・ストリープ)
2011 〇 ブラックスワン(ナタリー・ポートマン)
2010 〇 しあわせの隠れ場所(サンドラ・ブロック)
2009 〇 愛を読む人(ケイト・ウィンスレット)
2008 × エディットピアフ(マリオン・コティヤール)
2007 〇 クィーン(ヘレン・ミレン)
2006 × ウォークザライン(リース・ウィザースプーン)
2005 ◎ ミリオンダラーベイビー(ヒラリー・スワンク)
2004 × モンスター(シャーリーズ・セロン)
2003 〇 めぐりあう時間たち(ニコール・キッドマン)
2002 × チョコレート(ハル・ベリー)
2001 〇 エリンブロコビッチ(ジュリア・ロバーツ)
2000 × ボーイズドントクライ(ヒラリー・スワンク)
1999 ◎ 恋に落ちたシェイクスピア(グゥイネス・パルトロウ)
1998 〇 恋愛小説家(ヘレン・ハント)
1997 〇 ファーゴ(フランシス・マクドーマンド)
1996 × デッドマンウォーキング(スーザン・サランドン)
1995 × ブルースカイ(ジェシカ・ラング)
1994 〇 ピアノレッスン(ホリー・ハンター)
1993 〇 ハワーズエンド(エマ・トンプソン)
1992 ◎ 羊たちの沈黙(ジョディ・フォスター)
1991 × ミザリー(キャシー・ベイツ)
1990 ◎ ドライビングミスデイジー(ジェシカ・タンディ)
1989 × 告発の行方(ジョディ・フォスター)
1988 〇 月の輝く夜に(シェール)
1987 〇 愛は静けさの中に(マーリー・マトリン)
1986 × バウンティフルへの旅(ジェラルディン・ペイジ)
1985 〇 プレイスインザハート(サリー・フィールド)
1984 ◎ 愛と追憶の日々(シャーリー・マクレーン)
1983 × ソフィーの選択(メリル・ストリープ)
1982 〇 黄昏(キャサリン・ヘプバーン)
1981 〇 歌えロレッタ愛のために(シシー・スペイセク)
1980 〇 ノーマレイ(サリー・フィールド)

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【参考データ2】主演男優賞受賞作の作品賞ノミネート
◎⇒作品賞受賞 ⇒10作品
〇⇒作品賞ノミネート ⇒24作品
×⇒作品賞にノミネートされず ⇒8作品

2021 〇 ファーザー(アンソニー・ホプキンス)
2020 〇 ジョーカー(ホアキン・フェニックス)
2019 〇 ボヘミアンラプソディ(ラミ・マレック)
2018 〇 ウィンストンチャーチル(ゲイリー・オールドマン)
2017 〇 マンチェスターバイザシー(ケイシー・アフレック)
2016 〇 レヴェナント(レオナルド・ディカプリオ)
2015 〇 博士と彼女のセオリー(エディ・レッドメイン)
2014 〇 ダラスバイヤーズクラブ(マシュー・マコノヒー)
2013 〇 リンカーン(ダニエル・デイ・ルイス)
2012 ◎ アーティスト(ジャン・デジャルダン)
2011 ◎ 英国王のスピーチ(コリン・ファース)
2010 × クレイジーハート(ジェフ・ブリッジス)
2009 〇 ミルク(ショーン・ペン)
2008 〇 ゼアウィルビーブラッド(ダニエル・デイ・ルイス)
2007 × ラストキングオブスコットランド(フォレスト・ウィテッカー)
2006 〇 カポーティ(フィリップ・シーモア・ホフマン)
2005 〇 レイ(ジェイミー・フォックス)
2004 〇 ミスティックリバー(ショーン・ペン)
2003 〇 戦場のピアニスト(エイドリアン・ブロディ)
2002 × トレーニングデイ(デンゼル・ワシントン)
2001 ◎ グラディエーター(ラッセル・クロウ)
2000 ◎ アメリカンビューティー(ケビン・スベイシー)
1999 〇 ライフイズビューティフル(ロベルト・ベニーニ)
1998 〇 恋愛小説家(ジャック・ニコルソン)
1997 〇 シャイン(ジェフリー・ラッシュ)
1996 × リーピングラスベガス(ニコラス・ケイジ)
1995 ◎ フォレストガンプ(トム・ハンクス)
1994 × フィラデルフィア(トム・ハンクス)
1993 〇 セントオブウーマン(アル・パチーノ)
1992 ◎ 羊たちの沈黙(アンソニー・ホプキンス)
1991 × 運命の逆転(ジェレミー・アイアンズ)
1990 〇 マイレフトフット(ダニエル・デイ・ルイス)
1989 ◎ レインマン(ダスティン・ホフマン)
1988 × ウォール街(マイケル・ダクラス)
1987 × ハスラー2(ポール・ニューマン)
1986 〇 蜘蛛女のキス(ウィリアム・ハート)
1985 ◎ アマデウス(Fマーリー・エイブラハム)
1984 〇 テンダーマーシー(ロバート・デュバル)
1983 ◎ ガンジー(ベン・キングスレー)
1982 〇 黄昏(ヘンリー・フォンダ)
1981 〇 レイジングブル(ロバート・デ・ニーロ)
1980 ◎ クレイマークレイマー(ダスティン・ホフマン)

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【参考データ3】作品賞受賞作における「女性映画」
◎⇒女性だけが主人公の映画 ⇒ 3作品
〇⇒男女のペアが主人公の映画 ⇒ 8作品
×⇒男が主人公の映画 ⇒ 31作品

2021 ◎ ノマドランド
2020 × パラサイト
2019 × グリーンブック
2018 〇 シェイプオブウォーター
2017 × ムーンライト
2016 × スポットライト
2015 × バードマン
2014 × それでも夜は明ける
2013 × アルゴ
2012 × アーティスト
2011 × 英国王のスピーチ
2010 × ハートロッカー
2009 × スラムドッグミリオネア
2008 × ノーカントリー
2007 × ディパーテッド
2006 × クラッシュ
2005 〇 ミリオンダラーベイビー
2004 × ロードオブザリング
2003 ◎ シカゴ
2002 × ビューティフルマインド
2001 × グラディエーター
2000 × アメリカンビューティー
1999 〇 恋に落ちたシェイクスピア
1998 〇 タイタニック
1997 〇 イングリッシュペイシェント
1996 × ブレイブハート
1995 × フォレストガンプ
1994 × シンドラーのリスト
1993 × 許されざる者
1992 〇 羊たちの沈黙
1991 × ダンスウィズウルブズ
1990 〇 ドライビングミスデイジー
1989 × レインマン
1988 × ラストエンペラー
1987 × プラトーン
1986 〇 愛と哀しみの果て
1985 × アマデウス
1984 ◎ 愛と追憶の日々
1983 × ガンジー
1982 × 炎のランナー
1981 × 普通の人々
1980 × クレイマークレイマー

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それではまた、素晴らしい映画でお会いしましょう


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