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今の現場を仕切っているのは年の頃で言えば40になっているかいないかくらいの男性である。
我が社は現場をいくつか持っており、当人は数ヶ月は別の現場にいたらしい。
今私がいる現場を守ってきた某氏と当人がある日ケンカになって、結果某氏が他の現場へ動いて当人が戻ってきたということらしい。
当人は某氏のパワハラにずいぶん苦しんでいたらしく、そこは会社も把握済みであったから、動かされたのは加害者である某氏の方となった。
私は某氏とからむことなく来たので実際にどれほどひどかったのかは知らない。
被害者である当人は当然ながら某氏のことは時たま話題にしていたから、それはそれでお気の毒ではあったろう。
さて、パワハラの被害に遭った人物はその気持ちや痛みが分かるから決してパワハラなどはしないかと言われれば実はそうでもない。
自らがつらい思いをしたから他人にはつらい思いはさせたくないと考えられる人の割合は意外に小さい。
かつて自分が受けた苦痛は心の傷として残したまま、その葛藤をどこかで消化しようとなぜかパワハラ行為に及ぶ向きはけっこういる。
前職で、事務方にいて役員クラスからかなりのパワハラを受けたため現場勤務に移ったが、その本人が新しく入ってくる仲間をことごとくパワハラしてつぶしてしまっていたというのが例としてある。
現在はどうかと言えば、かつてパワハラで苦しんだはずの当人があろうことか私を相手にパワハラ行為をしている。
まだ慣れるには程遠い段階の人間の努力など一顧だにせず、ダメなところだけあげつらって明らかにバカにしたり見下ろしたりアオり立てたりを繰り返してきた。
自分が教えて私ができるようになったことは無視して、ほんの些細な不足ばかりをオオゴトのように騒ぎ立てるだけではさすがにこちらのやる気は低下する。
どうにも程度が過ぎたので会社の代表者に電話で相談し、下に付いた者にしか分からない当人の態度については理解してもらえたようである。
上や強い立場の人にはワザとらしいくらいに腰が低いためか、代表者も私の話に驚いているようだった。
私と代表者との話は今日になって当人に伝わったようである。
会社の中で情報として受け入れられたということは、当人はパワハラ加害者として正式に認知されたということである。
彼にしてみれば、今後の人生は「パワハラ加害者」の汚名を背負い続けることになったわけで誠にお気の毒というほかはない。
今後私の身の振り方も含めて何らかの答えが出るが、おそらく彼自身の考えよりは重いことになる。
仲間でいられるはずだった人間をつぶして無傷でいられるほど人の世は甘くはできていないのである。