飼い犬ウーゴくんが早起きで、3時台に起こされる。
早く寝ないと身体がリズムに乗らない。
だから、物音で目を覚まして時計を見たら、
まだ22時前だった。
私としては夜更けの気分である。
玄関のほうで音がする。
風が出たか。
玄関前に、駐輪小屋の屋根の部材があれこれ置いてある。
プラスチックの波板が風にあおられて倒れたのかもしれない。
面倒だが、直しに行くか。
布団の中でそんなふうに考えていたら、部屋の灯りが点いたので、
ぶったまげて飛び起きた。
侵入者!
泥棒!?
なぜ灯りを点ける?
部屋の入口に人が立っているが、
いきなりの灯りにまぶしくてよく見えない。
「寝てたか。ごめん」
※
顕微鏡で微生物を見てみたり、
トロンボーン吹いたりウクレレ弾いたり歌ったり、
パズルや謎解きで遊んでみたり、
金管アンサンブルやったロックやったり民謡やったり、
アニメヒーローに扮して動画を撮ってみたり、
小道具を作ったり動画編集したり、
切り絵や書道や陶芸に夢中になってみたり、
焼き印を作ってみたり、
セルフケアをモットーに鍼灸を軸としてみたり、
自転車が好きで地図も好きだったり、
易や相や暦を学んでみたり、
英米のロックやポップスを日本語詞にしてみたり、
家の補修を自力でやってみたり、駐輪小屋を建ててみたり、
サンスクリットを勉強したり占星術を学んでみたり、
興味があちこちへ散らかって、手に負えない。
書き上げられないし、どれを取っても注ぐ時間が足りない。
そういうところが自分の面白いところだと思う。
こんな私と恋愛するなら、どうせならその色々な事どもの端っ切れに
興味を持ってちょこちょこつまみ食いをしたら、
面白く飽きないんではないか、と思う。
ということは、そんな自分に興味を持ってくれる人も、
その人自身も、興味の取っ散らかったところの有る人だろう。
そういう人が、静かで主張の無い人のわけが無い。
私は自分の興味の赴くままに生活したい。
犬との生活を含めて体調を管理したい。
そのため、他の人と同居して生活するというのは、まず無理だろうと思う。
空気のような存在、という言い方をよく聞くけれど、
私はそういう感覚を持ったことが無い。
今まで付き合ってきた人も、みな空気ではなかった。
恋愛関係であって、安らかであったとしても、
空気ではない。
温かい湯であったとしても、足を滑らしたら溺れてしまう。
肩まで浸かったら温まるけれど、水圧で心臓には負担がかかる。
そんな感じのほうがしっくりくる。
他者というのが空気というほど
軽くて、存在を忘れてしまう、
ということは、私は生まれてこのかた無かった。
※
という認識が間違いだったことに気付いた。
忘れていた。
一人、いた。
いるということ自体を忘れているのだから、
その時点で条件を達成しているように思える。
町蔵である。
弟の町蔵は、風来坊という言葉がぴったりの人間だ。
いつの間にか旅に出て、風に乗ってふらりとやって来る。
その「ふらり」が今だったのだ。
「寝てたか。ごめん」
町蔵は言って、台所のほうへ行く。
初めて会う人が全て苦手な飼い犬ウーゴは、
部屋の隅っこの自分の寝床に戻って座って緊張した顔で台所の様子をうかがっている。
※
経済的にどのように辻褄を合わせているのか、
あまり詳しく聞いたことは無い。
日本で稼いで金を貯めて、身一つで外国を放浪しているようだ。
相手の懐にふいっと入るような愛嬌を持っているので、
どこでも困らないのだろう。
食うにせよ寝るにせよ移動手段にせよ、
いつでも誰かの世話になることができるようだ。
※
町蔵の旅の話を聞いていると、驚かされることばかりだ。
いつぞやは、中東の方からの船に乗せてもらい、
横浜だか横須賀だかに着いた時に、他の船員と一緒に陸の施設に入って食事かなんかして、
そのままニュルッと東京に戻ってきたらしい。
えーと。
入国してないですよね?税関通ってないですよね?
※
風来坊で諸国漫遊が成立しているなら、
たまに日本に帰って来るのはなぜなのか。
こんなうす汚れた国にわざわざ来なくてもいいんじゃないのか。
「まあ一応、ビザの問題とか有るし。
そういうの全く無視して行動してるわけでもないんだよ。」
嘘つけ!と思う。
「”うす汚れ”ているくらいならきれいなもんだ。
あからさまにグチャグチャな国がいくらでも在るから。
日本に入ったらやっぱりひとまず安心はできる。
家も有るしね。」
あんたこの家の住人のつもりだったんか。
5年ぶりくらいに突然現れて何をのたまうや。
※
と、いうことは、
しばらく日本で生活するつもりなのだろうか。
「半年か、そんくらいかなぁ。
まあ、子どもに顔を忘れられないうちにまた戻るけど。」
ぶっ込んできたな!
子ども?いつできた?どこに?一人だよね?
「そのうち日本にも連れて来るよ。」
そうですか。
気長に生きて待ちますわ。
※
ここに住んでもいい、と言ったのだが、
「住み込みの仕事を見付けた。」と言う。
いまどきそんな仕事は割りに合わないのではないか、と聞いたが、
フツーに考える”住み込みの仕事”ではないようだ。
どうやら、日本中流ボケの私などは、知らないほうが良い世界らしい。
「でも2,3日はいさせてもらおうかな。
いい季節だしね。」
世界を放浪してもなお、五月の深大寺は美しいようだ。
早く寝ないと身体がリズムに乗らない。
だから、物音で目を覚まして時計を見たら、
まだ22時前だった。
私としては夜更けの気分である。
玄関のほうで音がする。
風が出たか。
玄関前に、駐輪小屋の屋根の部材があれこれ置いてある。
プラスチックの波板が風にあおられて倒れたのかもしれない。
面倒だが、直しに行くか。
布団の中でそんなふうに考えていたら、部屋の灯りが点いたので、
ぶったまげて飛び起きた。
侵入者!
泥棒!?
なぜ灯りを点ける?
部屋の入口に人が立っているが、
いきなりの灯りにまぶしくてよく見えない。
「寝てたか。ごめん」
※
顕微鏡で微生物を見てみたり、
トロンボーン吹いたりウクレレ弾いたり歌ったり、
パズルや謎解きで遊んでみたり、
金管アンサンブルやったロックやったり民謡やったり、
アニメヒーローに扮して動画を撮ってみたり、
小道具を作ったり動画編集したり、
切り絵や書道や陶芸に夢中になってみたり、
焼き印を作ってみたり、
セルフケアをモットーに鍼灸を軸としてみたり、
自転車が好きで地図も好きだったり、
易や相や暦を学んでみたり、
英米のロックやポップスを日本語詞にしてみたり、
家の補修を自力でやってみたり、駐輪小屋を建ててみたり、
サンスクリットを勉強したり占星術を学んでみたり、
興味があちこちへ散らかって、手に負えない。
書き上げられないし、どれを取っても注ぐ時間が足りない。
そういうところが自分の面白いところだと思う。
こんな私と恋愛するなら、どうせならその色々な事どもの端っ切れに
興味を持ってちょこちょこつまみ食いをしたら、
面白く飽きないんではないか、と思う。
ということは、そんな自分に興味を持ってくれる人も、
その人自身も、興味の取っ散らかったところの有る人だろう。
そういう人が、静かで主張の無い人のわけが無い。
私は自分の興味の赴くままに生活したい。
犬との生活を含めて体調を管理したい。
そのため、他の人と同居して生活するというのは、まず無理だろうと思う。
空気のような存在、という言い方をよく聞くけれど、
私はそういう感覚を持ったことが無い。
今まで付き合ってきた人も、みな空気ではなかった。
恋愛関係であって、安らかであったとしても、
空気ではない。
温かい湯であったとしても、足を滑らしたら溺れてしまう。
肩まで浸かったら温まるけれど、水圧で心臓には負担がかかる。
そんな感じのほうがしっくりくる。
他者というのが空気というほど
軽くて、存在を忘れてしまう、
ということは、私は生まれてこのかた無かった。
※
という認識が間違いだったことに気付いた。
忘れていた。
一人、いた。
いるということ自体を忘れているのだから、
その時点で条件を達成しているように思える。
町蔵である。
弟の町蔵は、風来坊という言葉がぴったりの人間だ。
いつの間にか旅に出て、風に乗ってふらりとやって来る。
その「ふらり」が今だったのだ。
「寝てたか。ごめん」
町蔵は言って、台所のほうへ行く。
初めて会う人が全て苦手な飼い犬ウーゴは、
部屋の隅っこの自分の寝床に戻って座って緊張した顔で台所の様子をうかがっている。
※
経済的にどのように辻褄を合わせているのか、
あまり詳しく聞いたことは無い。
日本で稼いで金を貯めて、身一つで外国を放浪しているようだ。
相手の懐にふいっと入るような愛嬌を持っているので、
どこでも困らないのだろう。
食うにせよ寝るにせよ移動手段にせよ、
いつでも誰かの世話になることができるようだ。
※
町蔵の旅の話を聞いていると、驚かされることばかりだ。
いつぞやは、中東の方からの船に乗せてもらい、
横浜だか横須賀だかに着いた時に、他の船員と一緒に陸の施設に入って食事かなんかして、
そのままニュルッと東京に戻ってきたらしい。
えーと。
入国してないですよね?税関通ってないですよね?
※
風来坊で諸国漫遊が成立しているなら、
たまに日本に帰って来るのはなぜなのか。
こんなうす汚れた国にわざわざ来なくてもいいんじゃないのか。
「まあ一応、ビザの問題とか有るし。
そういうの全く無視して行動してるわけでもないんだよ。」
嘘つけ!と思う。
「”うす汚れ”ているくらいならきれいなもんだ。
あからさまにグチャグチャな国がいくらでも在るから。
日本に入ったらやっぱりひとまず安心はできる。
家も有るしね。」
あんたこの家の住人のつもりだったんか。
5年ぶりくらいに突然現れて何をのたまうや。
※
と、いうことは、
しばらく日本で生活するつもりなのだろうか。
「半年か、そんくらいかなぁ。
まあ、子どもに顔を忘れられないうちにまた戻るけど。」
ぶっ込んできたな!
子ども?いつできた?どこに?一人だよね?
「そのうち日本にも連れて来るよ。」
そうですか。
気長に生きて待ちますわ。
※
ここに住んでもいい、と言ったのだが、
「住み込みの仕事を見付けた。」と言う。
いまどきそんな仕事は割りに合わないのではないか、と聞いたが、
フツーに考える”住み込みの仕事”ではないようだ。
どうやら、日本中流ボケの私などは、知らないほうが良い世界らしい。
「でも2,3日はいさせてもらおうかな。
いい季節だしね。」
世界を放浪してもなお、五月の深大寺は美しいようだ。
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