犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

ゲゲゲの調布発信
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お気に入りの剪定鋏

2013年08月01日 | 毎月馬鹿
長袖シャツに長ズボンで、長靴を履き、
手ぬぐいを首か頭に巻いて、麦藁帽子、
手のひらはゴムで手の甲はメッシュの手袋。

庭仕事の時はだいたいこの服装。

それで、手製の篩に蚊取り線香を乗せ、
スコップを持ち、ポケットに剪定鋏。

剪定鋏は、ちょいちょい使う段になったら
作業着の胸ポケットに入れる。
それまではズボンのポケット。

と、いうのがパターンだが、先日、順番を間違えた。
はなから胸ポケットに剪定鋏を入れて作業を始めてしまった。
ズボンのポケットには咄嗟に写真を撮るための携帯電話も入れている。
携帯が鋏とぶつかって傷むといやなので、ついつい無意識で、間違えた。

作業の最初は、池から水を汲んで、鉢植えに水をやるのだ。

ひしゃくを使って近くの鉢に水をやり終え、次は
バケツに汲んで離れた鉢に運んで行く…

つもりが、バケツでもって池の水を汲もうと屈んだ拍子に、
胸に入れた剪定鋏がドボンですよ。

あっという間も無い。

重たい鋏は、池の底に沈んで行った。

手袋を外し、長袖シャツの片肌を脱ぎ、池のへりに伏せて
水中を探る。
水は濁り、底は見えない。
何かが手に触れる。

きもちわるいよー。

ぬるり。

ひぃぃ!!!

水の中の生き物は大概ぬるぬるしていて嫌いだよー。
池の中には鯉が2匹いるはずだ。ヤダヤダ。

ぬるりりりりりりり。

ぎょええええ!
鯉にしてはぬるりが長い!長い!
鯉の体がこんなに長いはずはない!

おかしい!と思った途端、水面が泡立ち、盛り上がり、ザババババーだって。
何?!

水のうねりは見る見る高く立ち上がって行く。
私はひっくり返ることもできず、片腕を水に突っ込んだまま、首をひねって見上げた。
手の甲には「ぬるりりり」の感触が続いている。

「おまえか」

声?
どこから?
もしやと思って見回すが、誰もいない。
隣の酒屋のよく声の通るおばちゃんが猫でも見つけたのかと思うが、
誰の姿も無い。

「おまえか」

声のする方向を探そうとするが、それはどちらともつかない。
誰もいないし、自分の声じゃないとすれば、声の主は新しく出現したこの
水の柱と考えるしか、ない。

「おまえか、と聞いている」

そりゃそうだろうけれど、何がおまえなのかテーマを言ってくれなきゃ
何の話かわからない。
まるで年寄りとの会話みたいだ。

ザザザザザ!

水の柱の表面が、細かく波立った。

「返事をしろ!」

ハ、ハイッ!

おまえかどうかは分からないが、返事をしろと言われれば返事するしかない。

「そうか、ではまず謝れ」

ごめんなさい。

おまえかどうかはまだ分からないままだし、何の嫌疑で謝らなきゃならないのか
まったく心当たりが無いが、謝れと言うのなら謝っちゃえ、
というのが日頃からの私の人づきあいのスタンスだ。

「よかろう。しかし、痛かった。今後気を付けろよ」

声が言うや、濁った水の柱は崩れるように池の中へ消え、
その跡からポン、と何かが飛び出て池のほとりに落ちた。

金の鋏をくれとは言わないけれど、
女神さまの方が良かったな。



毎月一日は法螺話を書いています。
って断るほどの内容でもないな。

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