15年あまり前に、鍼灸を学び始めた。
現代の医学と、中国古代の医学を学ぶ。
そう言えば、高校生の時に一番好きだったのは、生物と漢文だった。
芽生えていたのだなあ。
強壮ドリンク剤の商品名から、黄帝の名は知られている。
中国古代の医学をまとめた、ってことになっている。
『黄帝内経』の『素問』と『霊枢』をはじめとして、
『難経』だのなんだの、漢文の古典を読んだ。
江戸時代の研究書などもあれこれ読んだ。
今ならジャパニーズイングリッシュなんて言うけれど、
日本人の漢文は、日本人として学んだ漢文のパターンにはまっていて、
読みやすかったりする。
せっせと読んでいた頃には、慣れて、白文で読むことができた。
多分、今は無理。
中国はとにかく、前に支配していた国を倒すと、
何もかもぶち壊す。
だから、古い資料が遺りにくい。
なんでも、焼かれたくない大事な書物は
壁土で塗り込めたらしい。
それ…守ることはできても、結局のちのち発見できないじゃないか。
※
紙の作り方が発明されたのは、西暦105年、ということになっている。
後漢の時代だ。
それまでは、竹を細く割ったものに字を書いて、紐で綴って本にしていた。
海苔巻の巻き簾のちょっと幅の有る版みたいな感じだ。
あるいは、木の板や、何面かに削った木の棒に書いていた。
19世紀末から20世紀初頭にかけて、西洋人の探検隊が中国に入り、
あちゃこちゃを発掘した。
そこで、そういう簡牘がわらわらと発掘された。
知ってみれば、それは鍼灸の貴重な古典資料と同じ
墓からの発掘であったりする。
それは漢の時代、
かみーが無いから木に書いたー
前漢から更に遡って秦の時代のものも有る。
荷札とか、商取引とか、刑罰の記録とか。
篆書から隷書そして草書へと移り変わる様子が見られる。
なんたって、石碑じゃなくて肉筆なので、
活き活きとした筆遣いが見られる。
中国の西の奥地のほうともなると、かなり乾燥しているので、
竹や木でできた物が朽ちずに遺ることができたのだろう。
※
こういった簡牘の字が、私は大好きなのだ。
けっこう質の良い写真がインターネットでも見ることができる。
ああでも、机の上に置いて手本として書くのが楽だ。
私のPCはタブレット型なので、それができなくはないが。
でもやっぱり紙のほうが楽だし。
それに、手本のページをめくって、
今日はどれを臨書しようかと、墨をおろしながら
あれこれ選ぶ時間も楽しい。
※
地元の図書館に、二玄社刊『簡牘名蹟選』が有る。
このシリーズは地域によって分けられて全12巻からなる。
何がいいって、カラー写真なのがいい。
白黒で良い手本は今までにも有る。
天来書院のテキストシリーズでも「木簡」の巻が有る。
骨書が添えてあるので、筆をどう運べば良いか分かるのが長所だ。
しかし、いかんせん、
白黒だと、木目や割れ目の線なのか、
字そのものの墨の黒なのか、
見分けがつきにくい。
見分けがつきにくいから骨書で補っている、と言うこともできるだろう。
カラー写真だと、そのストレスが無いのだ。
木や竹の地の色の上に、くっきりと墨が乗っているのが見て取れる。
『簡牘名蹟選』は、そこがいい。
欲しい。欲しい。と思っていたが、数年前は我慢した。
図書館に有るのだから、いつでも借りられる。
でも、
図書館の本はやたらに割り広げるのも本が壊れそうで遠慮されるし、
墨で汚さないように気を遣うし、
全巻いっぺんに借りるのも気が引けるし、
長期に亘って借りるのもよろしくないし。
と、遠慮だらけになる。
※
買った。
買っちった。
古本だけど。
嬉しい嬉しい。
眺め放題、選び放題、臨書し放題だ。
※
原寸の写真と、拡大写真が並んでいるのもいい。
拡大してくれないと細部がどうなっているのか見えないし、
原寸が無いと実物のイメージが作りにくい。
どちらも必要なのだ。
※
何の字なのか、テキストが添えてあ
…
るものと無いものがある。
テキストには句読点が打ってあるので、
書き下し文は無いけれど、なんとか読めるかもしれない。
テキストの無い文は、きっと編者も「この字」と確定しにくいものなのだろう。
そういうものこそ、私には読めないのでガイドが欲しいのだが。
インターネットに頼れば良いか。
※
1970年代に甘粛省で発見された簡牘のカラー写真と
全ての釈文が付いた、という本も手に取って見たいものだ。
https://www.chugoku-shoten.com/mokuji/cmokuji/61678/61678.pdf
どこかの大学の図書館に有るかな。
調べた。やっぱり國學院に在る。ヨダレ
今は新型コロナの影響で、大学図書館に学外者は入れない。むむう
※
ほぼ4年ぶり?に筆を持つが、
好きでやたらと習っていた隷書はけっこう形になる。
筆を動かして、思ったように墨の形がつくのは、おもしろい。
大きく練習して、段々に小さく書く練習もして、
筆を替えていって、ゆくゆくは原寸大を目指すか。
そんなら竹を削って模造してみるか。どうか。
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