雄犬ジーロ12歳10ヶ月。
一腹仔、つまり同時に生まれた仔犬は7匹だった。
その内、唯一の雌犬カバサと一緒に、我が家で飼っている。
カバサは11歳の誕生日まであと5日という日に、先立ってしまった。
メスで、強かった。
知力体力ともに優れていた。
運動能力が高く、決めごとを覚えるのは早かった。
ルールもよく理解したが、それを上回って自我の欲求が強かった。
つまり、活発によく遊び、他の仔犬を踏みつけて走り、
とても元気で、いばりんぼで、
よくジャンプして、高い所に置いた物も盗り、
芸をよく覚え、家のルールを破ってはごまかした。
ジーロ下僕はそんなカバサ女帝に逆らうことはできなかった。
逆らえば、本気の喧嘩になり、
感情的に攻撃するジーロはすぐに疲れ、
立派な防具(たっぷりたるんだ首の皮)を持ったカバサは後半になって反撃し、最終的に勝つ。
本気の喧嘩は2年に一度くらい有った。
ジーロの我慢メーターが2年で一杯になるのだろう。
カバサにとって、自分よりちょっと小柄な動物は全て獲物だ。
一度狙ったらしつこく追撃する。
「高い所にいるから」と油断している、塀の上の猫にも跳び付いた。
猫はビックリする。こんなに高く跳ぶ犬もいるのか、と。
カバサが猫を追えば、ジーロも従った。
散歩中、道端の垣根の中に潜んでいた猫に、二匹で襲いかかってしまって困ったことも有る。
※
サンルームで、ジーロがじっと立っている。
おかしい。
サンルームにいるなら、椅子の上で寝るはずだ。
立っているなら、動きが有るはずだ。
何を固まっているのだろうか。具合が悪いのではないか。
近くに行くと、ハッと私に気付いた後も、また正面に視線を戻す。
傍らに立って、視線の先を見てみた。
ガラス戸を挟んで、すぐ目の前に、仔猫がいた。
親きょうだいとはぐれたのだろうか、物陰に一匹でいる。
コンクリートブロックを立てて置いてある、その上の段の穴に登ってみたりしている。
一人遊びしているのか、なんだろうか。
ジーロはそれに、吠えもせず、構いもせず、じっと見ているのだ。
カバサだったら、猫なんか許さない。
吠えて吠えて吠えて吠える。
猫は、犬が家から出られないのを知っている。
とは言え、あまり吠えられれば平気ではないから、庭に入ることは有っても、
サンルームから見える所はあまり通らなかった。
それが、最近はサンルームからほんの2、3mの所で猫が寝ていることも有る。
ジーロは全く気にしないのだ。
以前は、ジーロも吠えた。
リーダーであるカバサが吠えたら、自分も吠えた。
何に向かって吠えているのかは、分かっていなかったのかもしれない。
窓際にいるカバサの後方で吠えていた。
※
群れの動物である犬として、リーダーが吠えれば従って吠えるし、
リーダーが追えば従って追う。
ジーロにとってはそういうことだったのかもしれない。
自分一匹でいるなら、猫は吠えたり追ったりする対象ではなく、
なんかいるから見る、といった程度の物なのか。
この犬だけだったら、他の動物も同時に飼ったりできるのかもしれない。
いや、猫を飼うつもりは無いが。
一腹仔、つまり同時に生まれた仔犬は7匹だった。
その内、唯一の雌犬カバサと一緒に、我が家で飼っている。
カバサは11歳の誕生日まであと5日という日に、先立ってしまった。
メスで、強かった。
知力体力ともに優れていた。
運動能力が高く、決めごとを覚えるのは早かった。
ルールもよく理解したが、それを上回って自我の欲求が強かった。
つまり、活発によく遊び、他の仔犬を踏みつけて走り、
とても元気で、いばりんぼで、
よくジャンプして、高い所に置いた物も盗り、
芸をよく覚え、家のルールを破ってはごまかした。
ジーロ下僕はそんなカバサ女帝に逆らうことはできなかった。
逆らえば、本気の喧嘩になり、
感情的に攻撃するジーロはすぐに疲れ、
立派な防具(たっぷりたるんだ首の皮)を持ったカバサは後半になって反撃し、最終的に勝つ。
本気の喧嘩は2年に一度くらい有った。
ジーロの我慢メーターが2年で一杯になるのだろう。
カバサにとって、自分よりちょっと小柄な動物は全て獲物だ。
一度狙ったらしつこく追撃する。
「高い所にいるから」と油断している、塀の上の猫にも跳び付いた。
猫はビックリする。こんなに高く跳ぶ犬もいるのか、と。
カバサが猫を追えば、ジーロも従った。
散歩中、道端の垣根の中に潜んでいた猫に、二匹で襲いかかってしまって困ったことも有る。
※
サンルームで、ジーロがじっと立っている。
おかしい。
サンルームにいるなら、椅子の上で寝るはずだ。
立っているなら、動きが有るはずだ。
何を固まっているのだろうか。具合が悪いのではないか。
近くに行くと、ハッと私に気付いた後も、また正面に視線を戻す。
傍らに立って、視線の先を見てみた。
ガラス戸を挟んで、すぐ目の前に、仔猫がいた。
親きょうだいとはぐれたのだろうか、物陰に一匹でいる。
コンクリートブロックを立てて置いてある、その上の段の穴に登ってみたりしている。
一人遊びしているのか、なんだろうか。
ジーロはそれに、吠えもせず、構いもせず、じっと見ているのだ。
カバサだったら、猫なんか許さない。
吠えて吠えて吠えて吠える。
猫は、犬が家から出られないのを知っている。
とは言え、あまり吠えられれば平気ではないから、庭に入ることは有っても、
サンルームから見える所はあまり通らなかった。
それが、最近はサンルームからほんの2、3mの所で猫が寝ていることも有る。
ジーロは全く気にしないのだ。
以前は、ジーロも吠えた。
リーダーであるカバサが吠えたら、自分も吠えた。
何に向かって吠えているのかは、分かっていなかったのかもしれない。
窓際にいるカバサの後方で吠えていた。
※
群れの動物である犬として、リーダーが吠えれば従って吠えるし、
リーダーが追えば従って追う。
ジーロにとってはそういうことだったのかもしれない。
自分一匹でいるなら、猫は吠えたり追ったりする対象ではなく、
なんかいるから見る、といった程度の物なのか。
この犬だけだったら、他の動物も同時に飼ったりできるのかもしれない。
いや、猫を飼うつもりは無いが。
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