犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

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のらくろーど

2014年07月06日 | 流民の窓
のらくろの作者、田河水泡が暮らした森下の商店街は、
のらくろーどと称している。

「のらくろの酒」などと銘打って、水泡が愛飲したという酒を
売っていたりする。
これが、色濃い芳醇辛口で、私好み。
一升瓶で売ってくれりゃあいいのに。

文房具屋の店先で、Tシャツを売っている。
ケースをあけてもらおうと、店の奥に入り、声をかける。
2~3度呼んだら、パタパタと慌てておかみさんが出てきた。
「ごめんなさいね」
キリッと黒い前掛けをしている。
もちろん、のらくろの顔が白く染め抜かれている。
思わず
かわいい!
と声を上げてしまった。

Tシャツは女ものと男ものがあって、女ものはスリムだけど襟ぐりが大きい。
いや、ゆったり着たいですね。
「お客さんだったらこのサイズがいいと思いますよ。
肩にあててみましょうか。」
と、わざわざ袋から出して、背に合わせてみてくれた。
ばっちりです。これください。



のらくろは、戦争をすすめる漫画だという言われかたがある。
軍隊や戦争をおもしろおかしく描いているから、
子どもたちに、戦争を肯定する考え方を植えつける、というのである。
のらくろが軍隊や戦争を描いたせいで、多くの若者が死地に赴いた、
という言い方だ。

昨年、町田市の美術館でのらくろを扱った際に、
漫画評論家の夏目房之介さんの講義があったので、
老母を連れて行ってきた。
目から鱗が何枚か落ちた。
さきほどの言説に関して、いくつかの事実や反論を提示してもらえた。

実際のところは、
太平洋戦争が始まる頃には、軍隊を笑いのタネにしてけしからん、
ということで連載は休止させられていた。
それに、のらくろの読者は幼く、太平洋戦争で出陣する年齢には
達していなかった。

のらくろを読んだ影響で戦争を礼賛する、という構図がもし
あったとしたら、それはのらくろという作品や作家の責任というより、
読者、国民全体の責任である。
というのだ。
これは、それまでしたことの無い考え方だった。
納得し、自分の考えをまとめる助けとなった。

ウチには、古いのらくろがあるので、私も子どもの頃から読んでいた。
しかし、だからといって戦争に賛成するようにはならなかった。
自分ひとりを例にとってみたって、
のらくろを読んだからって戦争を肯定するようになるわけではないことは自明だ。

短絡的で安直な批判の虚偽は見抜けるようでありたい。

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