犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

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犬の2ヶ月

2018年05月15日 | 犬と暮らす
10年以上前、水道メーターの検針員の仕事をしていた。
一軒一軒の家を回り、水道メーターの数字をハンディターミナルに入力し、
検針票をプリントアウトして配布する。
漏水を見逃さないのも重要な仕事だ。
私の働いていた市では、2ヶ月に一度、同じ家を回る。

水道メーターは、家によって敷地内の様々な位置に在る。
門を開けて中に入り、家の裏をずっと奥まで行く場合もある。
家の表側の道路からではなく、裏側の道路のほうの水道管から水を引いているのだろう。
庭の隅っこに在ることもある。
バラの根元に在ったりすると、毎回痛い思いをする。

犬を庭で放し飼いしている家もある。
繋いではいるけれど、メーターに行く途中にいる場合や、
メーターが犬小屋の目の前だったりすることもある。

子どもの頃に飼っていた犬のミカさんは、ひどく臆病な犬だった。
嫌いな物がたくさんあった。
雷や花火で目の色が変わるほどおびえるのはもちろん、
男の人、年寄、制服の人、棒なども怖がって吠えた。

水道検針員は、制服を着て、メーターボックスを開けるための棒を持って
ヅカヅカと敷地に入って来て何か金属的な音を立てる。
ミカさんの嫌いなタイプだ。

ミカさんが犬の代表というわけではないけれど、
共通の好みの犬も世には多い。

あんまり犬に好かれる様子をしていないよな、という引け目や
こんなかっこうをしていたら犬に警戒されるよな、という警戒心が、
さらに犬の警戒心を呼ぶ。

吠えたてられる。
うっかり近付いて咬まれたことも数回ある。



いつも激昂する犬がいた。
顔じゅう皺だらけにして、口から泡を飛ばして吠えかかる。
飼い主さんに押さえてもらっておいて、何気ないふりで通る。

その犬が、ある月に検針に行ったら、ワンともスンとも吠えず、
尻尾を振って寄って来るのだ。
私はしゃがんで迎えて、充分近付いたらそっと肩から首を撫でた。

一体どうしたのだろう。と思った。別犬のようだ。
その後も経験して分かったが、
年を取ったのだ。

2ヶ月は、年寄の犬にとって人間の1年くらいにあたる。
1年ぶりに会ったらすっかり好々爺になってた、ということだった。
今まで吠えていたのがウソのように、ガラリと態度が変わり、ウェルカムになる。



母85歳が介護老人保健施設に2ヶ月入所して、帰って来た。
入所する前は朝夕にヘルパーさんに巡回してもらっていたが、
退所後は朝昼晩の3回にした。

以前来てくれていた人がまた担当してくれたり、
日によっては新しい人だったり。
毎回いろんな人が来る。

以前は、ヘルパーさんの作業中ずっと吠え続けていた。
母も参るくらいだったから、ヘルパーさんにとってはなおのこと、
ひどく迷惑だったろう。
入れ替わり、10人くらいの人が関わったが、吠え止むのはそのうち3人くらいで、
撫でられたのは1人だけだった。



退所後、ヘルパーさんが到着すると数回吠えるが、
わりとすぐに止め、近付いて行き、撫でられる。
以前から吠えられなかった人も「触ったのは初めてですー。」なんて言っている。

我が犬ジーロくん、老け込んだのである。
みなさん、「いろんな人が出入りする、って分かったのねー。いいこいいこ」
などと言ってくださる。
が、私は思う。老け込んだだけである。

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