犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

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逃げ帰る

2023年08月03日 | 毎月馬鹿
毎月一日は作り話を書いている。

自分の体験をもとに書くと、リアルになるのは良いけれど、
本当のできごとだと思われると困ったことになる場合も有る。
だから、奇想天外な事を書きゃいいのだが、どうも小さくまとまりがちだな。

毎月一日に作り話を書いて、翌日には言い訳を書いている。
昨日はサボったので、今日は一昨日の分の言い訳である。



盆踊りの輪の中で、下駄履きの巨漢に3回踏まれて、
文句を言ったら喧嘩になりそうになったので、
人混みに紛れて逃げた。
という話でした。



人気の有る会場だと、踊りの輪はぎっちぎちに混み合う。

混んでいたら混んでいるなりの踊り方をすれば、トラブルは起きない。
手はいつもよりゆっくりと小さく振る。



私の後ろの浴衣姿の青年が、女性を連れて来ていて、いきがっている。
振り付けを声で説明したりしながら踊っている。
それはいいのだけど。

混んでいる中で勢い良く手振りをするから、
私の顔にパシパシと袂(たもと)が当たる。
いやだよーん

曲が終わって、青年は女性に向かって、
「っていうね。」
なんて言っている。
なにがじゃ!

おっといけねえ。
落ち着けわたし



私は子どもの頃からずっとほとんど踊ったことが無かった。
15年前に、新宿二丁目太宗寺の盆踊りに通りかかりに寄って、
いっぺんにハマったのだ。

最初は何も分からないので、
輪の外に立って、踊りを練習した。

しばらくやっていると、手振りよりも足を先におぼえるべきだと気付いた。
基本的には表拍で右足を前、裏拍で左足を前、である。
しかし、表拍で左足を後ろに引いて、裏拍で右足を後ろに引くことも有る。
東京音頭はいきなりこれだ。

ここで間違うと、前から下がってきた人の足を踏んでしまうことになる。
あっ、すみません!
一度くらいなら良いのだが、おぼえが悪いので繰り返し間違ったりする。
そんな時は、輪から出て、もう一度おさらいし直したものだ。

曲の途中で進行方向が変わったり、
みんなで櫓のほうに一歩二歩出たり、元の位置にまた開いたりする、
というのも有る。
こんな時も、足をおぼえていないと、他人の足を踏んでしまう。



私は、足をおぼえるまでは輪に入らないことにした。

まあこれは私が自分自身に課したルールである。
他人を踏みたくないから、
マナーの延長として考えたことだ。

自分がそうしているからって、
他の人にも同じようにしろ、と思うのは、幼稚なことだ。



とは言え、なんじゃこの混雑は。
カオス



子どもはいいのよ、子どもは。
楽しければいいの。子どもは。



浴衣を着てきて、通っぽい感じを出しているオトナは、
ちゃんと踊れぇ!

と、思ってしまう。



楽しみにしていた『黒潮太鼓』である。
輪の中心に向かって大きく一歩踏み込んで、太鼓を叩く身振り手振り。
ここんとこが一番楽しい。

その、右足を前に一歩出す、というところで、
内側の輪の人が、右足を一歩後ろに引く、というふうに間違っておぼえている。

浴衣を着た男性である。
しかも体重は100㎏はゆうに有りそうだ。
しかも三人連れである。
しかも一人は下駄履きだ。

雪駄がけの巨漢が引いた足に踏まれた。
いってえぇぇ。
我慢、我慢。

内側の輪のほうが進みが速い。
ずれていく。
これでもう踏まれないとホッとしたのも束の間、
お連れさんの下駄履きの巨漢も、同じように足を間違う。
また踏まれた。
うおおお!なんじゃあんたら

次にまた踏み込むタイミングになった時、
私は思わず、前の巨漢の背中を手で押してしまった。
まったく、マナーにもとる行為だと思う。

痛みで冷静さを失っている。
そもそも「踊って楽しい!」というふうに感情がたかぶっている。
楽しい場でなければ、
「あすこは右足を一歩前、という振り付けですよ、
間違うと後ろの人が出した足を踏んでしまいます。
事故にならないように気を付けたいですね。」
と言えるはずだが、あたしゃ無理だったね。



背中を手で押されて、前の巨漢はこちらを振り向いた。
私の足を踏んだタイミングでは振り向かなかったので、
踏んだことにも気付いていなかったと思われる。
まあ、巨漢が下駄履きで、私の薄っぺたい足を踏んだところで、
気付かんだろうとは思う。
だからこそ、下駄で来るなよ、とも思う。
郡上踊りでもないんだし。



私の足は、怪我にもなっていなかった。
さほどの事故ではないんである。
その程度のことで頭に来ちゃった自分に自己嫌悪を感じながら、
混雑し過ぎた会場からこそこそと逃げるように帰った。

好きな曲でも、好きな曲だからこそ気持ち良く踊りたいのだから、
混んでいたら輪に入らない、
あきらめる気概を持てよ自分。
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