犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

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秋吉理香子『絶対正義』2016

2019年04月09日 | よみものみもの
テレビドラマの何やらハッピーな結末に
強い違和感を持ったので、原作を読んでみた。

ネタバレになるとよろしくない、というのがネット上のマナーだと思うので、
ドラマの結末がどうで、原作の流れがどうなのか、
具体的なことをまるで書かずに、どれだけ感想文を書けるか。

私の感想としては、
テレビドラマ化はうまくいっていた、と思う。
原作とは、登場人物のうち数人に関して、ずいぶん結末が違っている。
だが、それが物語の不快さに磨きを掛けているのが良いと思った。

範子にとって、法律から見て正当であるかどうかが、正しいかどうかの判断基準になっている。
その偏りから、友情や人情や家族愛や、事を荒立てないことによって得られるたくさんのものに
範子は全く価値を置かない。

テレビドラマの中では、その価値観を範子が推す相手はどういう人なのか、
その範囲を明確にしている。
規範を押し付ける対象が誰なのか、という基準の設定が有ることが、
登場人物の人間関係の結びつきを表現する結果になっている。
それもドラマとしての面白みを増している。

何が正しい事なのか、何をもって正しいと判断するのか、
正しいことは正義なのか、正義とは何なのか、
といったことを考えるきっかけにもなる物語である。
原作の小説だと、「法に則っているか」という一点になっており、
ちょっと単純過ぎな気がする。

テレビドラマだと時系列で語られるが、
小説は登場人物ごとに物語が進み、最後の場面に集約されていく。
ここが映像と文学の表現の違いだと思った。

テレビドラマ化に際して、
ハッピーエンドにしてしまったことと、テーマに深みが出たこと。
功罪の功が勝ったかな、と私は思う。

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