[あらすじ] 同居母86歳要介護2パーキンソン病認知症状少々のために、
一日に5回くらい介護や看護の人が家に入る。
飼い犬ジーロ去勢オス14歳慢性腎不全の
犬用の寝床は介護ベッドのすぐ横に位置している。
年老いて、家にちょくちょく他人が来るのも負担である。
理由を理解することのできない犬にとっては、猶のこと災難である。
他人を嫌う犬ではないが、臆病なところもあり、
緊張の絶えない状態になっている。
こいつはかわいそうだ。
私も、家に一日に5回他人が出入りするのは、落ち着かない。
気弱な犬がもっと安心して暮らせるようにしてやらねば。
亡父のもと書斎が有る。
父の遺品を処分することを母が嫌ったので、ほったらかしなままだ。
十畳の広さが有るが、三方に天井まで本箱が積まれている。
その中で、数年間私が生活して、荷物が溜まった。
これを全部片づける。
そして床に、犬の滑らないワックスを掛ける。
※
という作業をちまちまと進めている。
なんせ、本当に本が多い。
古い百科事典やらなんやらが詰まっている。
それをじゃんじゃん縛って、古紙回収に出す。
こういった本は、古書としても売り物にならない。
残念な物としては、母が関与した論文集の、印刷して届いて開封もしていない
10冊の束が2つ、どっしり。とか
亡父の小説が、印刷して届いて開封もしていない10冊の束がたくさん。とか
発行していた同人誌の古い号の余ったものの束が無数に。とか
容赦なく捨てていく。
亡父の読書ノート数十冊とか、
恋人からの手紙の束とか、先妻宛の手紙の束とか、
亡兄宛の手紙の束とか、
じゃんじゃん捨てる。
※
じゃんじゃんと言っても、
一度に作業できる量は多寡が知れている。
それに、古紙回収は週に一回で、
あんまり沢山を一遍に出すのは、気が引ける。
一回に出す量は、十畳の本の山から見ると、
焼石に水といった量だ。
「ジュウ」
と蒸発して消えていく。
部屋に戻って本棚を見ると、あまり変化を感じられない。
とは言え、やらにゃあならん。
焼け石にだって、何杯も何杯も何杯も水を掛け続ければ、
やがて冷えて来ようというもんだ。
※
毎日、犬の皮下注射の手伝いに来てくれる
近所の幼なじみ友人Mが言う。
以前、おもちゃの馬頭琴を手に入れたので、
一緒に教則本を買った。
その本のページの端っこに、
モンゴルの諺が紹介してあって、面白かった。
温暖な日本と、教訓がずいぶん違うものなのだ。
その中の一つを思い出す。と言う。
「歩けば、着く。」
そうだ。
歩かなければそもそも始まらないし、立ち止まったら進まない。
とりあえず陸地の続くモンゴルらしい言葉だ。
かなり歩きにくい所も有りそうだが。
※
とは言え、来月末にはワックスがけできる状態まで進みたいな。
「急ぐと、凍える。」
という諺も有るそうだ。
慌てて出かけると準備不足になりがちだ、
ということだという。
はいはい。
一日に5回くらい介護や看護の人が家に入る。
飼い犬ジーロ去勢オス14歳慢性腎不全の
犬用の寝床は介護ベッドのすぐ横に位置している。
年老いて、家にちょくちょく他人が来るのも負担である。
理由を理解することのできない犬にとっては、猶のこと災難である。
他人を嫌う犬ではないが、臆病なところもあり、
緊張の絶えない状態になっている。
こいつはかわいそうだ。
私も、家に一日に5回他人が出入りするのは、落ち着かない。
気弱な犬がもっと安心して暮らせるようにしてやらねば。
亡父のもと書斎が有る。
父の遺品を処分することを母が嫌ったので、ほったらかしなままだ。
十畳の広さが有るが、三方に天井まで本箱が積まれている。
その中で、数年間私が生活して、荷物が溜まった。
これを全部片づける。
そして床に、犬の滑らないワックスを掛ける。
※
という作業をちまちまと進めている。
なんせ、本当に本が多い。
古い百科事典やらなんやらが詰まっている。
それをじゃんじゃん縛って、古紙回収に出す。
こういった本は、古書としても売り物にならない。
残念な物としては、母が関与した論文集の、印刷して届いて開封もしていない
10冊の束が2つ、どっしり。とか
亡父の小説が、印刷して届いて開封もしていない10冊の束がたくさん。とか
発行していた同人誌の古い号の余ったものの束が無数に。とか
容赦なく捨てていく。
亡父の読書ノート数十冊とか、
恋人からの手紙の束とか、先妻宛の手紙の束とか、
亡兄宛の手紙の束とか、
じゃんじゃん捨てる。
※
じゃんじゃんと言っても、
一度に作業できる量は多寡が知れている。
それに、古紙回収は週に一回で、
あんまり沢山を一遍に出すのは、気が引ける。
一回に出す量は、十畳の本の山から見ると、
焼石に水といった量だ。
「ジュウ」
と蒸発して消えていく。
部屋に戻って本棚を見ると、あまり変化を感じられない。
とは言え、やらにゃあならん。
焼け石にだって、何杯も何杯も何杯も水を掛け続ければ、
やがて冷えて来ようというもんだ。
※
毎日、犬の皮下注射の手伝いに来てくれる
近所の幼なじみ友人Mが言う。
以前、おもちゃの馬頭琴を手に入れたので、
一緒に教則本を買った。
その本のページの端っこに、
モンゴルの諺が紹介してあって、面白かった。
温暖な日本と、教訓がずいぶん違うものなのだ。
その中の一つを思い出す。と言う。
「歩けば、着く。」
そうだ。
歩かなければそもそも始まらないし、立ち止まったら進まない。
とりあえず陸地の続くモンゴルらしい言葉だ。
かなり歩きにくい所も有りそうだが。
※
とは言え、来月末にはワックスがけできる状態まで進みたいな。
「急ぐと、凍える。」
という諺も有るそうだ。
慌てて出かけると準備不足になりがちだ、
ということだという。
はいはい。
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