犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

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南伸坊『本人伝説』

2021年12月02日 | よみものみもの
南伸坊さんは、おにぎり顔で知られている。

たいそうエラの張った輪郭の持主で、
しかも頭は三分刈り。
三角のおむすびが人間に生まれ変わったに違いないお人である。



ツルツルに剃ってから二十日近く経ち、
私の頭髪も存在感を増してきた。
三分刈りくらいにはなっている。

刈ってこの状態になったのではなく、
伸びてこの状態になったのだから、
三分刈りというのはおかしい気がする。
三分伸び?
なんだか語感がだらしない。



四月一日だけでは飽き足らないので、
毎月一日に法螺を書いている。
世の中の慣習なんか知ったこっちゃないのである。

昨日から12月。
世間は忙しい忙しいと言う中、
私はああでもないこうでもないと
伸坊さんに似せるために試行錯誤していた。



南伸坊さんは、顔まねをする。
メイクして鬘をかぶって衣装を着て、「本人」になりきる。

歴史人物だけを集めた『歴史上の本人』では、
実際にそんな姿だったか定かではない人物も具現化している。
好き放題じゃないか。

例えば、仏像などの彫刻で有名な運慶になりきって、
「運慶は私だ」なんて言いきっている。
彫ってみろ。彫って証明しろ。

肖像の残っていない人物ならなんでもアリか!?



ふざけているのである。



細い顔の人物に扮するとき、伸坊さんは
自分のエラを塗りつぶす。
そこはもう、キャンバスではないのである。

キャンバスでないのなら、何か。
額縁だろう。

洋画家の中川一政氏は、額縁も自作して、
テキトーな模様を描いたり、
「いろはにほへとちりぬるを」とかなんとか落書きみたいに
書いたりして、楽しんでいた。

伸坊さんも、額縁であるところのエラ部分は
落書きでもしたらどうだろう。(提案)



2012年発行の作品集に『本人伝説 The Legend of Honnin』が有る。

あとがきの中で、その手法の一つを明かしている。
顔にしっかりと陰影を描くのだ。

本来は、本人の骨格と照明の角度によって映し出されるはずの陰影である。
しかし、骨格が違うのだから、どうライティングしたって同じ陰影にはならない。
だったら描きゃいいんである。

写真に撮って、印刷すると、
なんの違和感も無くなる。



伸坊さんの手法で、伸坊さんになりきってみた。
骨格の違いを乗り越えようたって、
あたしにゃあんたのような立派なエラが無い。

伸坊さんのエラは、大きなキャンバスだ。
大は小を兼ねる。
大きいエラを塗りつぶして削ることはできるが、
無いエラは塗れない。

伸坊さんのエラは、キャンバスとしての才能なのだと
つくづく思った。



伸坊さんには目の下の涙袋が有る。
私には無い。
これを、描き込む。
ついでに、笑った時の目尻の皺や、
額の少しの皺や、頬骨のラインを描き込んでみた。

すると、
全体に黒ずんでしまい、なんだかかえって似なくなってしまった。

伸坊さんの白っぽさは、私の地肌の白っぽさそのままでいったほうが
似る気がする。



昨年、特別養護老人ホームに入居した老母の箪笥を片付けていたら、
パスポートが出てきた。

伸坊さんの『本人伝説』は、帯を外すとカバーにパスポート風の印刷がしてある。
白いカバー紙に、文字だけが印刷してある。



両方をスキャンし、丁寧過ぎない程度に合成し、
私の伸坊さん本人の写真をはめこんだ。
これをプリントアウトして、老母のパスポートのページに重ねる。
できやがり。



パスポートを持って、撮影。

顎がカメラに寄って頭がカメラから遠ざかるように、
ちょいと上を向く。
こうすると、ちょっとエラが強調される。かな?

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