犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

ゲゲゲの調布発信
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雑巾問題

2018年03月26日 | 椰子の実の中

[あらすじ] 犬のトイレを設置している部屋の床が、ヨレヨレ。
掃除してワックスを掛けるなら、母がローケンに入っている今だ今しか無い。
汚水はすぐに雑巾で吸い取る。
いくら有っても雑巾が足りないぞ。
https://blog.goo.ne.jp/su-san43/e/d69c2b44f23c8d0cf7346d9e644df9dd
3月15日三畳紀

10日あまり前の記事の、つづきである。


物置に行くと、有った有った。

旅先の旅館の、薄ぺらなタオルが多い。
思い出になるものなのか?
開封していないものばかりだ。

あとは銀行や、クリーニング屋や。
およそ出所は、マッチと同じである。
https://blog.goo.ne.jp/su-san43/e/51b001c4952f882778d4ada400fa031a
しかし、デザインで目を引くような物は、残念ながらタオルには無い。

おや手拭いもある。
私は手拭いコレクターですぞ。見逃しません。
こちらはデザインに期待ができそうだ。

赤く熨斗を印刷した袋の表書きには、こうあった。

「ビルマ方面合同 顕彰慰霊祭記念 ビルマ僚友会」
「於 四天王寺
ビルマ方面戦没者合同慰霊祭記念
(元ビルマ方面 最高指揮官 河邊正三大将揮毫)」

あわわ。
雑巾どころの騒ぎではない。

自分が最高指揮官を務めたビルマ方面軍の慰霊祭の記念品としての手拭いを染める文句を、
母の父は自分で書いたのだ。

草書。読めない。先生、何と読むのですか。

遺芳万里
遺烈千秋

サインは老陳官正と。
乙巳春日とは、この慰霊祭の行われた昭和40年(1965)の干支が「きのと、み」。

そうか、このような慰霊祭が行われているのなら、自分も参列したいと思う。
今でも続いているだろうか。
年に一度だろうか、同じ時期なのだろうか。

と思って、手拭いに染め抜かれた日付を見て、ゾクゾクするほど驚いた。
3月14日、今日なのだ。

同時に思う。
一体、指揮官の書いたものを慰霊の記念にもらって、遺族は喜ぶのだろうか。
インパールの指揮官は、「戦後も刺し違えて死のうと思った」という生存者もいるほどだ。
その上官であり、盧溝橋事件につづいてまたしても牟田口を止めなかったのが河辺だ。

遺芳も遺烈も、名誉を称える言葉だ。
万里は空間的に、千秋は時間的に永遠であることを意味する。
母の父自身は出家したので、靖国神社に神として祀られてはいない。
しかし、慰霊祭の記念の言葉は、靖国の精神と同じことだ。
自分の命をなげうって戦った、その名誉功績はいつまでもどこまでも続きますよ、
という書。

私が慰霊という意味を取り違えているのか?
称えることで慰める、ということなのか?
死を悼むことが慰霊なのかと思っていた。

同時に思う。
最高司令官の孫がもし慰霊祭に参列していたら、遺族はどう感じるのだろうか。
私自身は、何かの事を起こした人の親族には何も負うところは無いと考えている。
しかし、人はそう見るだろうか。

ほぼ同時に、あるニュースが目に入る。
地下鉄サリン事件は20日だったが、被害者集会が17日に行われた。
そこに一般参加者として松本死刑囚の三女が参加したというのだ。

遺族の感情はどうだろうか。

松本麗華氏は著書やツイッターやブログで発信している。
自分の親しくしていた人たちが、人を殺し、被害者や遺族から時を奪ってしまった、
その事実に向き合っている、と言う。
松本死刑囚は、今は向精神薬の投与で昏迷していて発言できない。
「お父さん」自身の言葉で、自分の父が何をしたのか、直接聞きたい。
麗華氏はそう言っている。

私にとって河邊正三は祖父にあたるが、私が生まれる前に他界している。
私の場合、河邊に「おじいちゃん」と呼びかけるような親しみは全く持っていない。
私が河邊を祖父の親しみで見ないことは、他人から見たらなんの意味も無い。孫は孫だ。

手拭いに染め抜かれた揮毫は最後のものになっただろう。
亡くなったのは昭和40年の3月2日なのだ。

やはり、知りたい。
戦後20年経った当時、どのような気持ちで、遺芳遺烈という言葉を使ったのだろうか。



三畳間を片付けていると、高い棚にある箱が目に付いた。
母の字で「父正三の本」と書いてある。
の本?蔵書だろうか?
それとも、自作の漢詩集だろうか?


つづく


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