犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

ゲゲゲの調布発信
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必要か十分か

2018年05月16日 | からだ
[あらすじ] 母85歳の友Nちゃん83歳が来た。

Nちゃんは若い頃から片耳が難聴である。
しかし、ここ数年もう一方の耳も聴力が落ちてきた。
相手の言っている事が聞き取れないことをいちいち気にしていられない。
自分の言いたい事を話すことにNちゃんは慣れてしまっている。

一方の母は、声が小こい。
しっかりはっきりしゃべらない。
隣合わせに座っていても、母とNちゃんの会話は成立していない。

Nちゃんは耳鼻科に相談に行ったと言う。
すると医師は、
「面と向かったら会話できるんだから、あなた、まだ補聴器を考えるのは早いですよ。」
と言ったそうだ。

Nちゃんは、マンション内のかるたクラブも辞めたと言う。
そうか、かるた取りはちゃんと聞こえないとゲームにならない。
と思ったら、そうではなかった。

「百人一首、やっている間はいいんですよ。
かるたを読む時は声を張るから。
終った後に、みんなでおしゃべりするでしょ。
それがもう、みんな何をしゃべってるのか分からないの。
つまらないから、辞めたのよ。」

人の話し声を聞き取るというのは、面と向かって一対一で会話することだけではない。
大勢で集まって、わいわいがやがややる中で、いろんな人の言う事を聞くことも入る。
老人マンションでの生活だと、食事もホールに集まってする。
人の集まる場での会話が重要だ。
こういう遊びの部分が、生きる楽しみになる。
それに、どうせ聞こえないからと相手の発言を無視することに慣れているのは、
とても残念だ。

私は、おしゃべりできないとつまらないから補聴器が使いたい、と
医師に相談してみて良い、と言った。
「でも、みなさん補聴器なんか使ってないのよ。」
ムカシの補聴器は耳の後ろに引っ掛けたりして目立っていたけれど、
今の補聴器はほんの小さなイヤホンくらいだったりするから、
ひょっとすると見えないだけで、みなさん使っているのかもしれませんよ。
ぜひ相談してください。

母も言った。
「私も、施設での生活で分かった。
毎日おんなじことの繰り返しの、どんなに下らない会話でも、
聞くことには意味がある。」

…やっと分かったか。
"下らない会話"を軽蔑して、近所で友達も作らなかった人だが。
今は言え言え、友達のために。

「帰ったら耳鼻科に検査に行く予定だから、
じゃあ、言ってみようかしら。」
Nちゃんの気持ちを大いに押して、見送った。

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