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TPP交渉が大筋合意し、次々に詳細が明らかされる中、水産物は農畜産物に比べちょっと影が薄い。「影響は限定的」というのが政府の評価だが、関税はコンブなど海藻類を除き、ほとんどが撤廃され、最終的にゼロになる。「全部の関税がゼロになるまで長時間かかる。当事者は誰も生きていない」「マイナスを気にするより、プラス面を見てしっかり励め」といった政府首脳の声も聞こえてくる。
しかし、水産物は農産物と異なり、もともと貿易のウエイトが高い。関税より為替変動の幅が大きいと指摘は事実だが、いつまでも円安基調が続くとは限らず、世界の水産物市場の需給変化によって一挙に輸入が増える局面はありうる。逆に、政府が主唱する「攻めの農林水業」による輸出振興が逆風に直面する事態も想定される。
本当に国内漁業の基本政策は十分か。競争力向上につながる足腰を強くする政策が現在、効果を発揮しているとはとても言えない。もともと漁業に「バラマキ」政策を施してきた経緯はなく、公共事業も低迷を極めている。
沿岸漁業者が求める担い手育成策(漁業後継者対策)にしても、28年度概算要求では「漁船リースモデル事業」を新規計上しているが、その予算額は3億円である。全国の沿岸漁業者に船価3千万円の中古船を20隻提供し、そのうち2分の1を国が負担しようという計画に、北海道では誰も期待していない。45歳未満の条件に当てはまる漁業後継者に中古船を与える(=循環させる?)発想がちょっと理解できないが、これなどはスキームを組み直して浜の実態にあった本来の担い手育成につなげるよう再考すべきだろう。
生意気な話をしてしまったが、春はオホーツク海のホタテ、秋は全道の秋サケ定置網と今年は「爆弾低気圧」と称される気象現象に大きな打撃を受けた。災害に強い漁業の構築は掛け声だけでなく、何とかしなければならない問題となっている。
同時に、北海道漁業はサンマやイカ、スケソウといった多獲性魚種が史上最低の不漁に悩んでいる。コンブも生産量の回復の道筋が見えてこない。
業界幹部は「今年は年間100万トンの大台を切る」と危機感を表明しており、資源管理ばかりでなく、資源回復に必要な育てる漁業、増大対策の展開が必要になっている。
以上、いろいろな問題、課題が出ており、11月号はそういう「多難な秋」を考えさせられる内容になっていれば幸いです。
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