水産庁は5月24日午前、自民党水産部会・総合水産調査会の合同会議で、規制緩和の要求に対する「水産政策の改革」案を具体的に示した。養殖業を営む漁協管理の特定区画漁業権を「換骨奪胎」し、知事許可とするほか、知事が付与する漁業権の「優先順位」を廃止する内容だったため、業界代表、国会議員から驚き、疑問の声が起こり、 次回に結論を持ち越した。水産庁は議員の疑問に回答を示し、自民党の了承を得たあと、首相の諮問機関「規制改革推進会議」(水産ワーキンググループ)に説明し協議する。一連の手続きのあと6月に政府が決定する「骨太の方針」に盛り込まれ、秋には必要な法制度の改正を提案する。
今回の 改革案では、水産資源の管理と成長産業化を両立させ、漁業者の所得向上と年齢のバランスのとれた漁業就業構造をめざす。11月時点で規制改革推進会議に示した「水産政策の改革の方向性」をより具体化したもので、水産庁はこの改革をもとに、政策予算の編成に反映させたい方針だ。 ただ、自民党の合同会議でそのまま了承されなかったのは、業界および関係議員とのコンセンサスが十分でなく「説明不足」を指摘されたことが大きい。
特に従来は漁協管理の特定区画漁業に民間企業の養殖業を参入促進するため、知事許可漁業に組み直す。その際、個別漁業権(民間企業)と団体漁業権(漁協組合員)に分け、漁業権の「優先順位」を廃止することで、「開放」した権利を固定化する方針を示したことに大きな疑問、反発が起きたと推察される。その前提となる「定置漁業権と区画漁業権は個別漁業者に付与する」 という変更は、戦後改革における民主的な漁業法の精神を否定し、明治漁業法に「先祖返り」するものとの指摘も聞かれる。
今後、漁協系統から全権を任された全漁連がどう評価し、判断し、修正を求めていくのかいかないのか。また、下部組織である各都道府県の漁連でどのような組織的な討論、コンセンサスをつくっていくのか注目される。その際、全漁連の有力団体である道漁連の動向が注目され、6月14日に控えた全道漁協組合長会議での「緊急決議」が必至の情勢になっている。この間、全くと言っていいほど組織的な討論を回避してきた漁協系統が水産庁の暴発とも言える「爆弾改革案」にどう対処し、受け入れていくのか「戦後最大の漁業改革」は6月の正念場に向けいよいよ佳境に入ってきた。