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函館市がキングサーモンの完全養殖をめざす 種苗生産ための水槽整備、浮沈式生け簀の適地調査も

2021-02-21 14:59:43 | ニュース

 函館市魚類養殖推進協議がこのほど書面で開かれ、キングサーモン(マスノスケ)を対象にした完全養殖を実現する新たな魚類養殖の取り組みを決めた。

 函館市の資料によると、スルメイカの不漁など漁業不振、加工原料不足の深刻化に加え、国、道による養殖推進の方針を背景に、10年後の漁業を見据え、栽培漁業へのウエイトを高めることで漁業所得を向上させるため、関連産業への経済効果が期待できるキングサーモンの養殖の研究に着手するとしている。

 キングサーモンを選択した理由は、市場に潜在的なニーズがあるが、大企業がビジネスの対象として考えていない隙間商材であることをあげている。また、キングサーモンの幼魚を近海で採捕するのは困難なため、完全養殖技術を確立し優良個体を育種選抜していく。研究は函館市、北大大学院水産科学研究院、国際水産・海洋都市推進機構が共同で行う。

 函館市は令和3年度予算案で、魚類養殖推進費として5,900万円余を計上し国際水産・海洋総合研究センター内に淡水用1基、海水用2基の飼育水槽を整備するほか、養殖に使用する浮沈式生け簀の設置場所を決定するため,事前に潮流など海況基礎調査を実施する。北大で飼育している人工魚や南かやべ地区で定置網に入った天然魚を入手し、飼育試験を行って成熟、淡水・海水での馴致などの知見を得る。現状ではメスが成熟するまで4年とみているが、今後の飼育試験しだいで変化もある。北大所有のキングサーモンは平成30年にふ化し、令和4年には採卵が可能になる。海面養殖試験は5年目で一部水揚げを予定している。

 協議会の委員からは「天然資源の不漁が続き、今後はTACが強化される状況で、天然資源に依存しないこの事業への期待は大きい」(南かやべ漁協・中村正俊委員)との意見が聞かれたほか、嵯峨直恆会長(函館国際水産・海洋都市推進機構長)は「海洋環境の変化や外国漁船の無秩序な操業などから不安定な水揚げ状況が続いている。魚類養殖の実現は、漁業経営の安定、地域経済の活性化に寄与する」と関係機関の連携強化を強調した。



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