大好きな作家のひとり川上弘美さんの「ニシノユキヒコの恋と冒険」を読んでハッとしました。
ニシノユキヒコったら 未だに私の心の別室に特別個室を持って住み続けては、
たまに何の前触れもなくふっと顔をのぞかせるA君のイメージとうりふたつなんだもの
中学時代どうしようもなく憧れてしまった、誰にでもとびきり優しくて たたずまいが上品で
運動も勉強も人付き合いも全てのバランスの整った、自分とは別世界の人間なのに、
でも2人きりで話すと
「このひと 私に特別な感情を ちょっと持ってない?」と思わせるような
距離のとり方が絶妙に上手い男子A君。
スマートにソフトに・・・・・とても自然に心に入り込んでくる感じ。
気になって近づく相手をみんな大事に扱って、
でも近づき過ぎるひとには「ああ、A君にとっては自分は一番じゃないんだな・・・」
と気づかせて、自ら身を引かせる感じ。
高校に入ってからは会うこともなかったけれど、耳に入るうわさは
「いつも女の子に取り巻かれている」とか「一緒にいる女の子がいつも違う」とかそんなのばっかりだったな。
そのくせ嫌われないんだ、この彼が。
ひとを傷つけない不思議な人でね。
あ、ほんとは傷ついてるひとはいっぱいいたのかもしれないですね。
自分の中だけで苦しんで傷ついていたのかもしれません。彼女も あの彼女も あと私もね。
「でも しょうがないよね、彼だもん」と許されていたと思います。
手が届いたつもりでいたけど、ほんとは全く届いていなかったのだと今はわかります。
いや、あの頃もわかってたな、わたし。
それで不思議なんだけどなぜかもう会えない気がするのです。
もうどこにもいないような、存在自体がまぼろしだったような。
そんなニュアンスもニシノユキヒコと重なるんですね。
ニシノユキヒコ、映画化されたんだそうです。
主演は竹之内豊さん、すごくいいと思います。
今になってちょっと気持ちをざわつかせた(ガラじゃないけどね~)、罪作りな小説でした。
でも面白かった。
映画も観てみたいな、もちろんひとりでです。