「最果てアーケード」 小川 洋子著
不思議な世界です。生きている人も非現実的だし
亡くなった人も非現実的。
でもそこにはっきりと「ある」と判るのが
「愛」なのです。
非現実的なレース屋さんの常連客は元舞台衣装を一手に引き受けていた
衣装係りさん。今も衣装を作り続けています。使われる当ての無い衣装を・・
彼女の仕事場には裾のレースが引きちぎられたシュミーズが飾られていて
悲しい物語が・・・・
百科事典を愛した少女は突然この世を去り
その父親は彼女の愛した辞典を最初から最後まで写しきります。
写し終わった後は何処へ行ったか二度と現れることなく・・・
その他剥製に入れる義眼だけを作り販売している店には
うさぎを愛した女性が訪れたり
ドアのぶだけを販売しているお店には不思議な空間があり・・
紙屋さんにあるのは古い絵葉書や使用済みの絵葉書まで。
知らない言葉で書かれた絵葉書も手に取っていると
書いた人の気持ちが何となく伝わってくるようで・・・
と
どの店もそこを訪れる客達も全て非現実的。
でも やわらかい包み込まれるような いつまでも一緒にいたいような
そんな不思議な一冊でした。