「しらす干し」は、茨城県を代表する水産加工品です。船上でしっかり冷やされ、水揚げ
されたしらすを温度管理しながら工場に運び込み、すぐに加工。その日のしらすの大きさ
や質に応じて水洗い、釜炊き、選別、乾燥等、一連の工程を丁寧に行い高品質な製品に仕
上げます。しらすは県内のすべての漁協で水揚げされていますが、北茨城市、日立市、大
洗町、鹿嶋市の漁獲量が多いです。特に大洗町では秋にしらす祭りが開催されて、盛り上
がります。茨城県のしらすの旬の時期は2回、4月~6月の 春に水揚げされるのが「春しら
す(マイワシの稚魚)」、8~10月に水揚げされるのが「秋しらす(カタクチイワシの稚魚)」
と呼ばれます。特に秋がもっとも脂ののった美味しいしらすが楽しめるということで有名
です。尚、茨城県では1月~3月までが禁漁期間です。生しらす丼が食べたいなと観光で来る
場合はこの期間を外してくださいね。今回は茨城県の「しらす干し」を紹介します。
<しらすとは>
しらすとはいわし類の稚仔(=ちし)魚であって、35mm以下程度のもの(混獲されたいわ
し類以外の稚仔魚を含む。)と定義されていますが、実際には体長1~2㎝程で、色素をもた
ず体が透き通っている稚魚を「しらす」と呼んでいるようです。私達が通年スーパーで購入
しているしらすは主にいわし類の中の「マイワシ」と「カタクチイワシ」の稚魚であること
がほとんどです。ちなみに、しらすの名前の由来は、茹でると白くなるから「白子(しらす)」
と呼ばれるようになったといわれています。しらすにはその地域ごとに旬の時期があります
から、産地を訪ねてその土地の旬なしらすを味わってみるのも良いです。
<しらすの漁獲量ランキング(2019年)>
しらすの漁獲量日本一は愛知県の11,433tで、シェアでは19.1%となっています。2位は静岡県
で8.3%、3位は大阪で6.2%のシェア。茨城県は4位で5.7%でした。数年前は兵庫県が1位だっ
たはず、特に淡路島の「生しらす丼」は有名ですね。でもその兵庫県の名前がありません。
獲れなくなったのかな?
<しらす干し生産量としらす干し消費量のランキング>
しらすを原料として一番量が多く加工されている製品が「しらす干し」です。
(1)加工品の「しらす干し」生産量ランキング(2018年)
1位は静岡県の4,455t(14.9%)、2位は兵庫県で(13.4%)、3位は愛知県(13.1%)、茨城
県は6位(7.4%)でした。何故か漁獲量でランキングしていない兵庫県が入っています。
この点はよくわかりません。
(2)しらす干し消費量ランキング(2020年)
しらす干しの1年間の消費量を47都道府県別に量と金額でまとめたデータを見ますと、
だいぶ顔ぶれが変わってきます。1位静岡県、2位高知県、3位和歌山県・・・7位茨城
県・・・11位兵庫県・・・47位宮崎県でした。1位の静岡県と47位の宮崎県では約10倍
の消費量の差があります。九州各県の消費量は押しなべて少ないのですが、特に宮崎県
の方は年間を通して、ほとんどしらす干しを食べていないことがわかります。しらす干
しを食べるか、食べないかには県民性に差がありますね。
<しらすの豆知識>
1.しらすの栄養価と効能
カルシウムが豊富に含まれており、しらす100gあたりには成人の1日のカルシウム目標摂取
量分約500mgが含まれています。さらに、魚の脂肪酸であるDHAやEPAも豊富。体にとても
良い魚です。その効果はさまざまで、高血圧や動脈硬化の原因となる血中のコレステロール
を減らすこと、血液の凝固を防ぎ、血栓を予防すること、血液中の中性脂肪値を低くするこ
となどがあります。さらに、老人性痴呆症や頭の働きを良くする効果があるといわれています。
2.しらすの製品
(1)しらす干し:薄い塩水でゆでて、七分乾きまで、天日干しや乾燥機で乾燥したもの。
水分率65~72%。
(2)釜揚げしらす:茹でて水切りした程度で乾燥させない。水分率:75~88%。
(3)ちりめんじゃこ:硬くなるまで干し上げたもの。水分率:35~50%。
(4)たたみいわし:生のまま薄い板状に敷いて干したもの
(5)生しらす:鮮度低下が早く、生食用として流通することは難しい問題でしたが、茨城県で
は新たな技術を開発し、生食用の生産もしています。
しらすは「しらす干し」や「釜揚げしらす」に加工されるのが主ですが、獲れたての新鮮な
生しらすは「生しらす丼」でいただくのが一番。プリプリとした食感が絶妙です。
3.しらすの保存方法
毎日食べるなら、冷蔵庫で密封せずに保存。表面だけが乾きやすく、下の方が傷みやすい
ので毎日軽く混ぜること。タッパのフタを閉めたり、ラップをかぶせると蒸れて逆に保存
性が悪くなる。冷凍保存する場合は小分けしてアルミホイルに包み、フリーザーパックに
いれる。半日前に冷蔵庫内で解凍する。冬場は常温での自然解凍でよい。
4.風邪で食欲がないときは、シラス干しを入れたおかゆがオススメ。大さじ2盛り入れれば、
体組織作りに欠かせない成分が摂れるし、なにより食べやすい。体が弱っている時に脂っぽ
いサバやアジなどを食べるより、体にもやさしいです。
<茨城沖のしらす漁は1艘引きが特徴>
伊豆から房総付近で産卵された卵が黒潮に乗り、ふ化して茨城県沿岸に運ばれてきます。漁獲量
は産卵量と海流、生き残りの環境などが大きく影響を与えます。茨城県の漁法は主流である船曳
網漁業です。茨城らしさの特徴は、全国的にも珍しい1艘曳きであることです。1艘の船が魚群の
周りに網を入れ、群れをまいて獲る漁法です。1回の網入れ時間が短いため魚の傷みが少なく生き
たまま漁獲されます。そして、漁獲した直後に氷で活け締めするので、極めて弱い魚であるしらす
を鮮度良く水揚げすることができます。ですから、獲れたてのプリプリの食感を残したまま市場に
提供することができるのです。漁獲量上位の地域では2艘曳きが漁獲法の主体です。この漁法では
しらすを引っ張りながら30分~1時間以上網を引くため、最初に入ったしらすの鮮度が落ちてしま
います。
<茨城県が開発した凍結生しらす>
生しらすはプリプリとした食感で大人気。しかし、すぐに鮮度が落ちてしまい、本来のおいしさを
味わうことは、水揚げする漁港の近く、しかも漁期でないと難しいとされてきました。そんな課題
を解決するべく立ち上がったのが、茨城県のしらす漁師たちです。まず着手したのは、茨城県水産
試験場が開発した鮮度管理技術の導入と、漁獲から船上処理、原料選定、洗浄まで一連の工程の精
度とスピードの向上。そして、徹底した品質へのこだわりから生しらすを冷凍した「海の輝き」と
「ひたち浜漬け」の商品化にこぎつけました。いずれも冷凍品で保存性・可搬性に優れているのが
何よりの魅力。解凍後もほとんど型くずれがなく、いつでも獲れたての食感と透明感を楽しめます。
(1)冷凍パッケージされた生しらす「海の輝き」:港に帰る前の最後の一網。そのしらすに特別
鮮度管理技術を施して生まれたのが「海の輝き」生しらす。漁師が船上で手間と時間を
掛け、これまでにない高鮮度のしらすを港に運びます。そのしらすを冷凍パッケージする
ことで、これまで漁港近くでしか味わえなかった生しらすの美味しさが、料理店や家庭で
も味わえるようになりました。天然のほのかな甘味があり、身がしっかりしまっています。
生はもちろん釜揚げにするのも贅沢な食し方です。
(2)飴色に輝く「ひたち浜漬け」:新鮮なものを味付けすると、ひと味違ったものになるとの発想
から生まれたのが「ひたち浜漬け」です。「海の輝き」の味わいを生かし白醤油にじっくり
と漬け込んで加工し、急速冷凍処理で仕上げます。深い味わいと飴色に輝く美しさが魅力で
す。流水解凍するだけでそのまま食べられ、鮮度と食味がよみがえります。
<しらすが食べられるお店>
① 大洗町漁協かあちゃんの店:大洗町漁協の女性部が切り盛りするかあちゃんの店。生シラスを使っ
た丼や御膳は定番の人気メニュー。ここで「海の輝き」生シラスが使われている(その日にシ
ラスの水揚げがあった場合は、獲れたての生シラスを使用)。お勧めは、生シラスと釜揚げシ
ラスが贅沢に盛られた2色丼定食。生シラス特有の旨味と、釜揚げシラスのふわりとした食感
が一度に味わえる逸品だ。
② 久慈サンピア日立・レストランパステル(日立市):海の輝きを使ったお勧めメニューは『釜揚げ
&しらす丼』。久慈漁港にほど近く、海沿いを走る国道245号線沿いに立地している。
③ としまや月浜の湯・料亭魚ぐん探ちき(北茨城市):お勧めメニューは「生しらす御膳」。生しら
す御膳は、生しらす丼、刺身、しらすのかき揚げ、吸い物など、しらすが様々な料理で提供さ
れており、しらすを堪能するにはもってこいの御膳だ。
生しらすの「海の輝き」そして、白醤油漬けの「ひたち浜漬け」は共に、旨味たっぷり!御飯にピッタリ!
みんなに愛される茨城県のしらすです。
是非ご賞味あれ!
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