どこにでもいる、私のように目立たない人間は。
「ああ、今日もあんまし濡れてないな」
いつも通りの流れで、
いつも通りのセックスを始めた恋人の和馬(かずま)にしがみつきながら、
私はエアコンの吹き出し口上部で光る緑色のランプをぼんやりと眺めていた。
「いい? イイならイイってちゃんと言えよ」
「……うん」いつ頃からだろうか。多分、最初からだったと思う。セックスの最中に、私が考え事をするようになったのは…
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ローマとギリシャの英雄たち 黎明篇―プルタークの物語 (新潮文庫) | |
阿刀田 高 | |
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