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『菜の花、胸に咲いた』立ち読みプリ~ズ

2005年10月17日 21時44分11秒 | スイーツ文庫 BLOG


au、ボーダフォン、そしてドコモの公式サイトである
<電子書店パピレス><電子書店パピレスDX>さんにて
好評発売中のこの作品

最初に原稿を読んだときの感動は
いまでも思い出すことができます
目頭が熱くなって 最後の場面を何度も何度も読みました

おすすめの一冊
ちょこっと立ち読みプリーズ

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『菜の花、胸に咲いた』(田代ききょう 著)

 一人できている新入生など私くらいのものだったのだ。
 威圧するような三階建ての石造りの寮。私は心細さを必死にこらえた。
 何とか無事に手続きを済ませ、二階の部屋に案内されるとすぐにまた問題が起きた。先に送っていた私の荷物が部屋になかったのだ。
 ない……。どうして? とっくに運ばれているはずなのに。
 同室の新入生は私だけ。梱包したままの荷物がその部屋にないのは明らかだった。事務所に戻ってみたものの、まだ手続きする人でいっぱいである。
 声をかけられる雰囲気ではなかった。
 少し待って聞きにいけばよかったのだが、私は混乱してしまった。
 どうしよう……。
 陽が落ちかけ、夕闇がせまっていた。部屋の寝台の上に一人、座ったまま、私は声をあげて泣き出してしまった。
 そのとき……。
「新入生の方? どうしたの」
 最初に声をかけてくれたのが、春美さんだった。
 春美さんは四年生になったばかりで、一五歳だったはずだ。今から思うとわずか一五の少女なのだけれど、当時の私にはとてつもなく大人に感じられた。
 真ん中で分け、二本の三つ編みにした髪は、胸の下までくるほど長かった。春美さんの髪は、細いけれどうっとうしいほどの量があり、いつでも濡れているように輝いていた。
 それから目につくのが、クリーム色の平らで広い額だった。尖ったもので突つきたくなるような滑らかな額。そこに、真っ直ぐな、先にいって少し太くなる形の凛々しい眉がのっていた。
 そうして……首や手足がきわだって長い。だから、目や顔は丸みを帯びていて柔らかい印象なのに、全体としては若武者を連想させるのだった。
 声も独特だった。髪と同じように、いつでも濡れているような、暗闇にとけ込むような落ちついた声……。
 そう、はじめてその声を聞いたときから、私はどこかが少しおかしくなっていたのかもしれない。

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ものがたりのカギとなる人物・晴美さんと
主人公との出会いの場面です

つづきは製品版でおたのしみくださいませ



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