(2)近日発売開始★
白いカンバスを見ながら、これから描くその絵に、
僕は『昇天してゆく女たち』と立派な名をつけた。
いつも苦心する構図分割は容易に定められた。
画面をまず対角線で分割し、次に対角線の左下から右上へと蛇行線を引き、その蛇行線上に裸体の女を三人描いた。
三人の女をS字を形づくりながら蛇行させて、ゆっくりと右上へ昇天して行くようにした。
下に連なる少女に対して、右上から優しく微笑みをなげかけて、そっと手をさしのべる女の姿態の動きと視線に、上昇と下降の微妙なリズムが溶け合うようにした。
画面中央を占める少女は、妖しげで大胆に腰をくねらせ、
母とおぼしき上の女のあとを登っていかせ、
少女に続く女を、少女に縋りつくような、少女を高く掲げるようなポーズをとらせて、
両手を少女の足に触れようとしながら上昇していく姿にした。
もちろんこの三人の女は、上から祐子、さつき、典子を現わしていた。
祐子と典子に挟まれたさつきの色を最も明るく塗って、祐子の肌を神聖な青白さで輝かせて、それから人間的な肌の色で典子の肌を色どることにきめた。
(『愛は哀しみよりもなお深く』(2)より)
(1)発売☆
PR
-------------------------
『偶像再興』序言 | |
和辻哲郎著 | |