長い付き合いの友人が、「肺癌かもしれん。」と言った。
おれは思わず、身を乗り出した。
嬉しくて。
ということは、今後の人生を悔いなく、楽しみ尽くすと決められるのだな?
と、言ってしまい、かなり引かれた。でも、そいつはおれを怒らなかった。
何故なら、おれの本音を見抜いたからだ。
そう、本当に羨ましかったからだ。
いつ死ぬかを、限りなく明確に出来たならといつも願っていた。
ある日突然も嫌だし、ダラダラとボケながら溶けていくように逝くのも嫌だった。
あと半年。あと、3ヶ月。そんなカウントダウンがおれには必要だった。
神様と対峙して、どうにか折り合いをつける。
そのためには、カウントダウンがいつも欲しかった。
「死」を恐れたくない。
「死」と手を握りたい。
「生まれ」を突然にやっつけたのだから。
「死」はこちらの要望とあちらのとを折衷してみたい。
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