読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

民主主義とは何なのか

2017年09月09日 16時44分22秒 | ■読む
長谷川三千子著、文春新書刊
戦後の民主主義教育を受け、民主主義の理想に何の疑いも抱かないまま社会に出て大きな戸惑いを感じました。現実の社会が非常に複雑で理解しがたいからなのだと思います。それは人間の感情、理性、利害が複雑に交錯する為です。また、テレビ、ラジオ、書籍、インターネットなどの情報に触れ、いつの世も建て前と本音がうまく同居し合い、その狭間で右往左往している人々がほとんどであるのだと思います。この世の中は決して教わった民主主義で動いてはいないことが、長い経験で分かっていました。何かが違う。ずれている。そうした違和感が募っていました。
本書は、民主主義と言われる思想が人間の本性に根ざしたもので無いことを痛烈に指摘してます。読み進めていて、腑に落ちる事柄がちりばめられています。極論とも感じながら、著者の論が現実をしっかりと見据えている事に疑いはありません。日本人が議論下手であることを実感しましたが、一方で、欧米流のディベートのようなパフォーマンスが民主主義の原理を実現するのかという疑問を抱いていました。これもまた民主主義を実現する肝腎の傾聴する姿勢を破壊するものであると、本書で確認できました。
体験で分かったことは、人が満足するには「共感でき」、「納得する」ことが必要で、決して「合理的な理由」を求めているのではないということです。それに気付いて、対応が随分楽になりました。トラブルの解決に一番必要な心構えであったと思います。言い換えれば、「理性」ではなく「感情」に訴えることが最も大切で、その裏付けとして「合理的な理由」が不可欠であると言うことです。その順番を間違って地雷を何度も踏んでしまった末の理解でした。この人間の現実のあり方が民主主義の本質にそぐわないと著者は主張していると理解しました。いくら理屈を聞いても、不愉快な感情はなかなか治ません。残念ながらそれが現実だと思います。
本書では、フランス革命とアメリカの独立の際の思想の基盤を検証し滅多切りにしています。学問的な評価は知りませんが、ごもっともであると感じました。少なくとも、ギリシャの哲学者が民主主義を最上の政治形態としなかった理由と、西欧の民主主義の理論的な道筋が本書によって大分理解出来ました。刺激的な著作であると思います。
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URL => https://ja.wikipedia.org/wiki/谷川三千子
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評価は5です。

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