『主人在宅ストレス症候群』というのがある。
普段家にいない夫が一日中在宅するようになると
妻は大きなストレスを抱えるようになり、
それが原因で胃潰瘍や高血圧をはじめとする身体的不調、
それにうつ・パニック障害など心理的症状を引き起こすというのである。
そうであれば、長年仕事一筋だった夫が定年を迎えた
その時も要注意ということなのだろう。実際、このケースが多いのだそうだ。
74歳・主婦もそんな悩みを抱えて新聞の投書欄に投稿したのかもしれない。
この主婦の夫は退職して3年近くになるが、
毎日ソファでごろ寝して過ごしているのだという。
若い頃からコツコツと努力する人だったから、
そんな姿を見せられると、ついイライラさせられる。
それで、「何か好きなことでもやったらどう」と言ってはみるが、何もしようとしない。
そうとあって、ますますストレスが溜まってくると訴えるのだ。
実はこの話、他人事と笑い飛ばすわけにもいかない。
こちらも似たような状況なのである。
退職した後、日がな一日パソコン、あるいはテレビの前に
座り込んで過ごすことが多くなった。
カレンダーの予定表を見ると、今月の外出は合わせて7日だ。
エッセイ教室や歌のレッスンといった趣味のものもあるが、
あとは4度の病院通い。
こんな状況だから、まさに〝三食昼寝付き〟といったところで、
しばしば妻の不機嫌に直撃されることがある。
さて、あの主婦はどうしたか。続きがある。
ある日、夫からボソッと「放っておいてくれないか」と言われ、ドキッとしたという。
よくよく考えてみたら、夫にとって今が人生で一番好きに
している時間かもしれないと思ったからだ。
頑張らない老人がいても良いではないか。
それより食が細くなった夫の栄養状態だけに気を配り、
たくさん働いた夫にはそのご褒美として長生きしてもらおう。
そう割り切ったのだという。
なんとまあ、微笑ましくも羨ましいような話である。
でも、〝人生100年時代〟だ。余生は長い。
何もせずゴロゴロしてばかりで過ごせるはずはない。
あるいは、この奥さん、「コツコツ努力する夫のこと、
いずれ何か好きなことをやり出すに違いない」と読み、
「それまでは放っておこう」と考えたのかもしれない。
とにもかくにも、夫婦円満おめでとうである。
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