「実は自分は会社で生きるのがつらかった、仕事が生きがいと
信じ込むことで感受性が摩滅させてしまった、会社では人の中
で気をつかっていた、今は平日の週3日、午前10時から午後
3時までスポーツジムで過ごす日々を続けてる、休憩を挟みな
がら黙々とこなす、誰とも口をきかないで済むことに深い安堵
感がある、自分にとってはこの時間がかけがえのないものだ」
これは10年前私が定年退職後にある雑誌に掲載された64歳
男性のリタイヤ後の日々を綴った一節である、当時の私と同じ
年でサラリーマンだったこともあり、喪失感と解放感、なぜか
共感できるものがあったことを記憶している。
日々の暮らしに大きな変化があるわけではない、それは現役時
代もリタイヤしてもあまり変わらないものだ、違いがあるとす
れば一日の流れに起伏があるかないかだ、仕事をしていればあ
る程度の刺激が人間関係も含めてあるがリタイヤするとゼロか
らのスタートである。
64歳男性にとって毎日が平凡であっても新しい生き方に挑戦
して、幸せを感じているなら、きっとそれが生きがいだと思う、
そして人間社会の濃やかな景色が見えるのがリタイヤ後の人生
であることは間違いない。