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今おさえておくべき蚊のキホンを聞いてきた(びわ湖国際医療フォーラム)

2016-07-09 21:40:03 | デング熱

びわ湖国際医療フォーラムで国立感染研究所 昆虫医科学部 津田良夫先生の講演を聞いてきました。蚊の研究、プロフェッショナルのわかりやすいお話。講演内容のなかから媒介蚊についておさえておくべきキホンをいくつか紹介します。

  • 蚊の臨界密度(critical density)という概念
    たとえば蚊が1匹いたとして、病気が流行るかといえば考えにくい。10匹でも100匹でもしかり。では1000匹になれば可能性あるわけだが、蚊の密度がある閾値を超えると病気が流行する可能性がでてくるポイントがある。
  • ヒトスジシマカに刺されてデング熱にかかる確率
    (数式示され)10匹に刺されて24%、30匹に刺されて50%。 
  • イエカとヤブカ、活動時間
    イエカは夜間。ヤブカ(ヒトスジシマカ、ネッタイシマカなど)は昼間活動時間帯。
    夜中に寝ているときにプーンとやってくるのはイエカ。デングやチクングニヤやジカは媒介しないのでその点については安心
  • 探索型と待ち伏せ型
    探索型は、吸血対象の動物を求めて飛び回る。 吸血対象の周囲(誘因範囲という)へきて、さらに別のセンサーで対象をキャッチして吸血。イエカは探索型。だから夜中、寝ているところへプーンとやって来る。
    待ち伏せ型は藪などのなかで、吸血の対象がやって来るのを待っている。 おなじく誘因範囲を察知して吸血行動へ。藪に近づかなければリスク減らせるが、公園のベンチは道と藪の境目に置いてあることがあるから危険度高い。
  • ヒト以外も刺される。
    カエルを刺す蚊(カエルの背中に蚊が同じ方向向いてたかっている画像)。カエルの顔周囲を飛ぶと食べられてしまうので、背中にまわりこんで一旦地面に着地。それから歩いて背中を登って吸血。
  • Q.DEETに耐性の蚊は可能性?
    A.可能性高くない。耐性は種を保存し生き残ってゆくために起きるから、たとえば殺虫剤への耐性は起こりうるが、リペラント(虫よけ)は、塗っていない個体のところに行けばよいだけのことだから、耐性が起こる必要はないのではないか。 
  • シンガポールの蚊対策
    非常にsystemicに確立しているが、systemicになりすぎてベテラン立案者、研究者がいないのではないか。現場の人はきちんと仕事して、何が起こったらどこに情報くるかなど確立しているけれど 研究者がいない(論文が出ていない)
  • 開発段階と蚊媒介疾患
    ジャングルを森林開拓の段階⇒マラリア
    田んぼの段階⇒日本脳炎
    さらに都市化したら⇒デング
  • ある病原体がある種の蚊で媒介できるかどうか
    蚊の体内で増殖するかどうか、中腸から外に出れるかどうかの2要素。
    たとえばマラリア原虫はハマダラカの体内で♂♀増殖、中腸から外に出るということができる。(蚊自体にとっては消化器感染症)
  • ネッタイシマカとヒトスジシマカの鑑別
    胸のところに1本筋がはいっているかどうか 

非常に明快で、引き込まれる講演でした。先生にはご挨拶させていただき、当サイトにアップの旨ご了解いただきました。ありがとうございます重ねて感謝です。

びわ湖国際医療フォーラム、次回は2017年1月28日です。
http://www.ac-koka.jp/~mqg09201/

 


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