今回図書館でお借りしたのは、「不実在探偵(アリス・シュレディンガー)の推理
/井上悠宇(いのうえ ゆう)著」です。朝日新聞紙上(夕刊だったか?)で
紹介されていたのが読もうとしたきっかけでした。幸い二番手で読むことが
できましたが、私のあとにはすでに10人ほど順番待ちであるようです。
面白かったです、あっという間に読み終えました。親しみやすいのです。
絵が浮かんでくるっていうのかなあ、それが誉め言葉になっているかどうかは
ともかく、アニメ映画の原作としてすぐに使えるような気がするっていいますかね。
表紙にあるような美少女がズバリ探偵役で、鋭い謎解きしてくれるだけで見る価値
ありますよね。ただ残念ながら、彼女は言語による意思疎通ができず、ダイスの
示す数字で「ハイ」「イイエ」「ワカンナイ」しか表現できないため、ヒロインに
新進気鋭の実力派声優を当てられないのが玉に瑕ではあります。彼女は「不実在」
なのですから、致し方ないとあきらめるか、それとも、彼女の心の声をモノローグ
で語らせることならできるのかも。
ラノベ(=ライトノベル)ってのをいまだに読んだことはありませんが、たぶん
それに近いような軽いタッチで物語は進行する割に、主人公らが巻き込まれる
事件は手が込んでいて、今日的問題がその背後に見え隠れします。たまたまこの前、
横溝正史さんの「白と黒」を再読したばかりですが、同じようなテーマが事件の
発端となっていることも興味深いです。その扱いはまるで違っているようで、
実は内在する問題は何も変わっていないようでもあります。ただし、昭和石頭の
私では事件の真相に迫ることは難しく、アリスちゃんの手助けが必要なのです。
彼女らによって明かされる謎も意味深で、読みごたえがあり、軽さと重さのやや
アンバランスな感じも心地よく、悪い気はしません。アリスちゃんの推理の続きを
読みたいと思ったのは、私だけではないと思いますよ。