スピリッツ系の酒はいざしらず、醸造酒は一般的には食べながら飲まれるものが多い。ワイン、日本清酒、紹興酒などはもちろん、ビールものどの渇きを潤すためもあるが、食べ物とともにあるといえよう(特にベルギービール)。だから醸造酒を生み出した国々では食文化が発達する。ワインの国のフランス・イタリア・スペイン料理、紹興酒の国の中華料理、清酒の国の日本料理(特に懐石料理)など。
ところが台湾では、料理こそ美味しい料理がたくさん生み出されているが、酒の種類は極めて乏しい。前回書いたように、そもそも料理とともに酒を飲むという風習があまりない。私が行った「青葉」という台湾料理屋のメニューには、少なくとも80種類の料理が写真入で載っており、選ぶのに迷うほどであった。ところが酒はビール一種類(台湾ビール)と紹興酒だけであった。ビールはそもそもドイツなど西欧で育った酒だ。紹興酒は台湾でも造られているが中国大陸の紹興市で生まれた酒である。
つまり台湾には自ら生み出した酒がないのではないか? 一つ私の知っている酒は「小米酒」という台湾原住民の酒だ。名前の通り米で造られたどぶろくのような酒である(前回訪問時に『漂流木』という店で飲んだ)。しかし前述の「青葉」など置いてもいない。この酒を、搾って清酒にするなど、造り方や米の種類などを工夫していけば、日本の地酒が多様に花咲いたように、多種多様な酒が出来て、同じく多種多様な台湾料理とさまざまなマッチングを生み出すはずだ。
なぜそのようにならないのか?
いろいろと理由はあるだろうが、最大の理由は、台湾では酒は国の専売事業であることに起因していると思う。日本統治時代の1922(大正11)年、日本の帝国議会は台湾での酒の専売を可決し(つまり民営を国有化した)、以来80年、2002年まで台湾は酒の専売を続けて来た。
つまり民営化されて日が浅い。民営化されてないと多種多様な酒は生まれにくい。ましてや競争がないので、より美味しい酒を造ることも求めることも起こりにくい。
私は多種類の、美味しい台湾料理を食べながら「何ともったいないことか・・・」と嘆いた。もっとも台湾の人は「要らぬお節介」と言うかもしれないが・・・(再び続く)