旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

両国国技館「5千人の第九」を聞く

2010-03-01 16:30:00 | 文化(音楽、絵画、映画)

 

 年末の定番であるベートーヴェン「第九」を、時ならぬ春先に聞いた。昨日両国国技館で開かれた「墨田“第九”を歌う5千人の会」である。義兄に券を頂いたのだが、義兄家族と私と娘で、仲良くマス席(四人)に座っての鑑賞である。
 以前からワイフに「相撲を見に行こう」と言われていたのであるが実現せず、国技館のマス席に座るのは初めて。 “東10の6番”の席に、「四人では狭いなあ」とか言いながら納まり、「名演奏だったらブラボーと叫んで座布団をなげるのかなあ」とか、「クラシックを聞くというより一杯飲む雰囲気だなあ」などと言っていると、娘が本当にビールを買ってきた。始まるまでに時間もあったので、初めてのマス席で先ず一杯飲(や)った。(音楽が始まって飲んだりはしませんでしたぞ)

 それはさておき、第一部のセレモニーでは司会に和服姿のおねえさんと、ご当地墨田出身の木の実ナナさんなどが出てきて「5千人第九の会」の来歴を話す。聞けば、事の起こりは1965年で、爾来、全国から集まる5千人が毎年歌い継ぎ、今回は第26回にあたるという。大変な歴史である。
 見れば、国技館のちょうど半分が5千人の合唱団に占められ、半分が客席、真中の土俵上に新日本フィルを中心にしたオーケストラ、壇上にソプラノ佐藤しのぶ、テノール錦織健ほかソリストが並ぶ・・・。構えといい5千人の発するヴォリュームといい迫力があった。
 わが社の監査役であるH氏も毎年参加しているようだが(昨日もどこかにいたのであろう)、一度参加したら止められないだろうと思う。

 司会のおねえさんは向島の料理屋の女将さんと見受けたが、東京下町特有の雰囲気があってなかなかよかった。そのおねえさんの話によれば、25年前の発足当時は、向島の芸者衆も和服姿で参加したが、何といっても歌詞のドイツ語が読めない。一人ドイツ語の分かる芸者さんが歌詞を漢字に翻訳、その傑作の一つが、何度も出てくる「歓び」という意味の「FREUDE(フロイデ)」で、「風呂出(ふろいで)」と訳したというから面白い。
 「下町墨田のベートーヴェン」ならではの雰囲気であった。


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