旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

熊野古道で何を見るか(つづき)

2010-03-05 11:49:39 | 

 

 熊野古道は世界遺産である。2004年7月1日、「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部としてユネスコの「遺跡及び文化的景観」に登録された。つまり「道」が世界遺産になったのである。そのような例としてはスペインの「サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」ぐらいのもので、あまり例はないらしい。(Wikipediaより)

 そもそもこの参詣道は京都に始まっている。京の都の皇族や貴族連中が熊野詣のために長年踏み固めてきた道である。京都から大阪(浪速)を通って、山への取り付き口である田辺までを「紀伊路」と呼び、東側の伊勢神宮から熊野三山までの道を「伊勢路」という。
 山中の道がまさに熊野古道というにふさわしいのであろうが、これには大、中、小と大峰奥駆路(吉野―熊野三山)の四つがある。大は「大辺路(おおへち)」(田辺―串本―熊野三山)、中は「中辺路(なかへち)」(田辺―熊野三山)、小は「小辺路(こへち)」(高野山―熊野三山)と呼ばれ、いずれも熊野三山を目指す道である。

 大峰奥駆路(おくがけみち)などは1700mの大峰山を辿る道で、素人には到底無理なようだ。他の大中小も標高差7~800メートルもあり、全てを歩くにはかなりの体力と日数を要するだろう。
 今回の二泊三日のツアーは、中辺路の中のほんの10数キロ(一日5、6キロ)を歩き、あとはバスと船で熊野三山をめぐるというもの。しかも夜は勝浦観光ホテルなどに泊まりゆっくり温泉に入るという、まあ大名旅行のようなものかもしれない。
 とはいえ、恐らく雨が降るであろう山道を数キロ歩くだけでも、日ごろ歩くことの少ない人間として、それなりの覚悟をしている。

 本宮大社からはジェット船で瀞峡谷を見て、バスで熊野川に沿い勝浦に向かうが、実はこの川も「世界遺産としての道」にふくまれているのだ。古来、本宮大社から速玉大社までは、熊野川を舟で下っていたので、この川は「参詣道」の一部である。
 われわれは楽をするために船やバスに乗るのではなく、世界遺産の一部を学ぶために乗るのだと心得よう。

 どうも熊野古道で見るべきは、「道と川」であるようだ。


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