老いは、未来を思うより過去を辿る。今度の旅でも昔のことばかり思い出していた。
法要の後の二次会で、隆介君が提供してくれた名古屋の名酒『醸し人九平次』を飲むと、その美味しさのあまり、2009年萬乗醸造の蔵を訪ね、九平次氏が山田錦を力説したことを思い出す。九重の飯田高原で芹洋子の「坊がつる賛歌」の歌碑を見ると、2015年東京めじろ会(大分県人による酒の会)に参加してくれた彼女の熱唱と、記念写真に収まってくれたことを思い出す。
九平次さんと
芹洋子さんと
しかし今回得た最大のものは、そのような懐古趣味ではなかった。それは若者たちの台頭、わが兄弟の子供たち、つまり若きいとこ軍団の息吹であった。
前述した二次会で、隆介は、中学教師としての活動と最近の研究成果を示す三つの論文を見せてくれた。それは『コロナ禍における中学校部活動の実態』(首藤隆介著)ほか教育課程経営論に関する二つの共著論文であった。忙しい中学教師がこのような研究を続け、諸論文を発表するまでに至っていることをうれしく思う。
研究成果と言えば、立教大学教授首藤若菜は、労働論に取り組んで多くの課題を世に問うている。私の書棚にも『統合される男女の職場』や『物流危機は終わらない』など多くの著書や論文が並んでいる。
萱場工業の研究室に勤める首藤悠からは、『スマート道路モニタリングシステムの開発』という研究論文が寄せられている。聞くところによれば総務大臣賞を獲得したというニュースもある。
わが娘首藤史織は、10年前にNPOオペラ普及団体ミャゴラトーリを立ち上げ、ここ数年、日本オペラ界の鬼才岩田達宗氏のご協力を受け、新解釈による六つのオペラ公演に取り組んだ。コロナ禍の下で、小劇場演劇的オペラという新ジャンルを追及している。
その他のいとこたちの活躍も数多い。今や世代は代わりつつある。老いぼれが懐古趣味に陥っている時ではない。いつか、これら若きいとこ軍団がうちそろい、研究発表会をやってくないかと期待している。一族の前で共同発表をするなど、そんなセンチメンタリズムは今の若者は持ち合わせていないかもしれないが。
とまれ、淳の七回忌は、図らずも若い息吹を伝えてくれた。
隆介の研究論文
『酒は風』『旅のプラズマ』…など、今も書き続けられているのは、素晴らしいことですね。
私たちも、それぞれの分野で、それなりに、生きてきて、子、孫世代へと何らかのつながりが続いているのは、ありがたいことです。
私など無芸大飲食だけで、オハズカシイ。でも、人生いろいろ、これからも楽しいことがあるかもと、歩んでいきたいものです。
そして子や孫は、親から受け継いだものに、はるかに勝る世の教えを学び取り成長していく…。素晴らしいことです。