第一幕の初めから、各歌手の圧倒的歌唱力により舞台に惹きつけられたが、物語の展開上当然のことながら、圧巻は二幕と三幕であった。
二幕はジェルモン(アルフレードの父親)が登場し、ヴィオレッタに息子との別れを迫り、またアルフレードには、女と別れ故郷へ帰ろうと説得する場面。
アルレードとの別れは死を意味する、と断固抵抗するヴィオレッタに対し、冷酷無比なジェルモンは、息子は我がジェルモン家を継がねばならない、また家には、婚約中の美しい娘もいる、その破談を避けるためにも息子と別れてくれ、と執拗に迫る。貴族としての地位と家系を守るという自我心だけで、そこに人間性のかけらもない。長いやり取りの末、ヴィオレッタは遂に折れる。「その美しい娘さんに伝えてください。哀れな女が犠牲になったと」と告げてアルフレードと別れる決心をする。最も哭かされたシーンであった。
また、ジェルモンは息子に向かって、「あんな女を忘れて故郷へ帰ろう。お前の故郷、あの美しい海と陸に囲まれたプロヴァンスへ」と説得する。有名なアリアの場面だが、ここでもジェルモンの冷酷さが際立った。
こうして二人の仲は裂かれたかに見えたが、真実の愛は消えることはなかった。一人になったヴィオレッタは、病を重ね死を意識するまでになったが、アルフレードに手紙を書き続ける。そこに気高い愛を見出したジェルモン親子は、死の直前のヴィオレッタを訪れる。「遅すぎたヮ」と呟くヴィオレッタは、アルレードの腕に抱かれて、最後の力を振り絞って、二人で「パリを離れて」を熱唱する。第三幕のクライマックスシーンである。そこでは、あの冷酷無比に見えたジェルンも、「私の行為は間違いであった」と懺悔する。
この愛は、一体なんであったのか? (つづく)
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