旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

ロンーーコスタリカではラム酒をこう呼ぶ

2007-08-03 15:14:11 | 

 

 梅雨明けを待ちながら、「夏が来れば思い出す旅」として、コスタリカ、メキシコについて書いてきた(7月21日より7回)。そしてようやく東京の梅雨も明けた。ここまできたら、夏にもっとも似合う中米の酒――ラムとテキーラに触れぬわけにはいかない。

 コスタリカでは、ラムのことを「ロン」と呼ぶ。この旅では専らロンを飲み歩いた。明るいさわやかな空気が、カラッとしたロンののど越しにぴったりだ。どこの国で飲むラムよりも美味しいと思った。

 サンホセのビアホール風飲み屋で、ビールのあとロンを飲んでいると、カウンターの中で音楽のリズムに合わせながら酒を運んでいるウェイトレスが、「4人でそんなに飲むのなら、3000コロン(1コロンは当時0.56円)の瓶ごと買ったらどうか。それの方が安い」と小瓶を出してきた。それまでに結構飲んでいたので、「なぜそれを早く教えてくれないのか」と思ったが、注文する。
 「RON”Centenario”」というきれいな小瓶が運ばれてきたので、3000コロン払うと「2400コロンでよい」と600コロンお釣りをくれた。何とも大雑把というか、一体なにが真実かわかりはしない。少し残った小瓶は「持って帰れ」と言うので持ち帰り、今も私の酒棚を飾っている。

 

 しばらくすると、そのウェイトレスが体をくねらせながら近寄り、「向かいの女性が、あなた方のおごりでビールを飲みたいと言っている」と告げる。見ると、一人ぽつねんと掛けている女性がいる。念のために「ビールはいくらか」と値段を聞くと、1500コロンだという。われわれの飲んだビールの三倍の値段だ。「何で女の飲むビールは高いのだ」と口から出そうになったが、ここでひるんでは日本男児の名がすたる、と野暮な質問はやめてOKを出す。
 コスタリカに詳しい同行のI氏に聞くと、「向かいの女性」なるものは、いわゆる商売女で、2階にはちゃんと個室が用意されているという。しかも、背後に『ひも』などいなくて、それぞれが独立営業を営む『社長』だそうな。
 へえ・・・、社長ともなればさすがに誘い方も垢抜けしているし、飲むビールもわれわれ庶民のものより高いのだ・・・なんて変なところに感心しながら、Centenarioをひたすら飲む。

 コスタリカは、治安もよく安全な町だ。唯一、この飲み屋の二階が危険な場所なのかも知れない。わあわあ話しながら飲んでいるうちに、向かいの女性は見切りをつけたのか、それとも他の相手が見つかったのか消えていた。
 ロンの美味さに引き込まれているうちに、われわれは”危険な場所”を避けることができたのである。
                     
                                 
 


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