イギリスのパブが単なる飲み屋でないことはいろいろと聞いていた。しかし、とは言え結局はビール(もっと言えばエール)を飲みに行く居酒屋という性格が一番強いと思ってきた。
しかし今回の旅にあたっていろんな本を読めば読むほど、パブというのはその生成の歴史からして単なる飲み屋ではない、ということがわかってきた。特に、最近かなり変遷を遂げた「都会のパブ」はさておき、本来の姿をとどめる「田舎のパブ」は、単なる飲み屋ではなく、地域住民と深く結びついた「生活の場」なのだ。
だから昨日書いたように、宿屋であり雑貨屋であり公民館(正にパブリックハウス!)であり郵便局から公衆便所の役割まで担っているのであろう。その歴史を昨日紹介した白井哲也著『パブは愉しいは』は次のように書いている。
「英国では、11世紀頃から旅人の宿屋『イン』、食事の場『タヴァン』、エールを飲ませる『エールハウス』なるものが、それぞれ別々の形で、時には融合しながら発展した。18世紀には公民館(パブリックハウス)として、結婚式などの集まりはもちろん、闘鶏、観劇といったイベントに使われたり、政治活動の拠点となった。」(同書10頁)
従ってまた、次のようにも書いている。
「・・・住民にとっても、地域にとっても、パブは今でも生命線だ。英国では、三人に二人が習慣的にパブに行き、三人に一人が少なくとも週に一度は行く。・・・」(同書11頁)
こうなってくると、パブというのはイギリス人の生活の場そのものだ。日本の居酒屋も、情報の場であり、人とのつながりの場ではあるが、イギリスのパブとは本質的に違うような気がする。どうも一見の旅行者が冷やかし半分に入るところではないような気がしてきた。もちろん、最近の都会のパブはファミレスタイプや女性向タイプなど、かなり様々な形態があるようだし、典型的な田舎のパブでも、いったん受け入れられると親戚付き合い以上の付き合いをしてくれるようであるが・・・。
日本の居酒屋と,何がどこで異なってきたのか・・・?
実に奥深いエールの味ともども、不思議な魅力でわたしをひきつける世界である。
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