本書には昭和8年2月から16年10月にいたる、12編の作品が収められておりその内2編は現代小説である。満州事変、支那事変、太平洋戦争へと戦火が拡大していった時局の中で、これだけの大衆小説を書いたのは勇気がいっただろうと推測される。また、山本周五郎が得意とする”職人もの””芸道もの”に繋がる「しぐれ傘」「竜と虎」はその先駆けだろう。