本日は天才トランペッター、リー・モーガンのサヴォイ盤をご紹介します。録音年月日は1956年11月5日。タイトルが示すように、まだ18歳だった若きリー・モーガンを世に売り出すための作品ですが、実は前日の11月4日にブルーノートに「リー・モーガン・インディード!」を吹き込んでいるため、厳密にはデビュー作ではありません。おそらくですがセッション自体は共演のハンク・モブレーのために用意されたもの(モブレーは同年に名盤「ジャズ・メッセージ・オヴ・ハンク・モブレー」をサヴォイに吹き込んでいます)でしょうが、共演のモーガンのトランペットがあまりにも鮮烈だったためにリーダーを入れ替えて発売したのではないかと推察します。モーガン、モブレー以外のメンバーはサヴォイの顔とも言えるハンク・ジョーンズ(ピアノ)にダグ・ワトキンス(ベース)、アート・テイラー(ドラム)と言った面子です。
アルバムはモブレーの自作曲"Hank's Shout"で幕を開けます。モブレーのドライブ感満点のソロの後、モーガンがまさに火の出るようなトランペットソロを2分間近くに渡って繰り広げます。18歳とは思えない驚異的なテクニックと情熱的なアドリブに、居合わせた面々が「何だこいつは!」と度肝を抜かれる様が目に浮かぶようです。続く”Nostalgia”は先輩トランペッターであるファッツ・ナヴァロ作の名曲で、ここではモーガンがミュート奏法でミディアムテンポのナンバーを軽やかに吹き切ります。モブレー、ジョーンズの歌心あふれるソロも見事。続くダグ・ワトキンス作の典型的バップ”Bet”を挟んで、後半4曲はスタンダードのメドレー。"Softly As In A Morning Sunrise"はワトキンスのベースソロ、”P.S. I Love You”はモーガン、"Easy Living"はジョーンズ、”That’sAll”はモブレーがそれぞれソロを取るリレー方式です。個人的にはこの手の趣向はあまり好きではありませんが、モーガンの情感たっぷりのソロはさすがで、バラードでの表現力もデビュー時点で身につけているのがよく分かります。この後10年以上にわたってシーンを引っ張り続けるモーガンのデビュー当時の姿を捉えた貴重な1枚です。