ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ジョン・コルトレーン/スタンダード・コルトレーン

2024-08-12 15:52:37 | ジャズ(ハードバップ)

マイルス・デイヴィス・クインテットの一員としてプレスティッジ・レコードのマラソン・セッションに参加したジョン・コルトレーンは、その後1958年まで同レーベルに多くの吹き込みを行います。しかし、今となっては信じられないことですが当時のコルトレーンのステイタスは高くありませんでした。同レーベルの売れっ子テナー奏者は何と言っても"ボス"ことジーン・アモンズであり、エディ・ロックジョー・デイヴィスでした。コルトレーンがアトランティックに移籍するまでの間にプレスティッジからコルトレーン名義で発売されたのは「ソウルトレーン」含めたった3枚しかありません。

その後、「ジャイアント・ステップス」等の成功を経て、モダンジャズの第一人者と目されるようになったコルトレーンですが、プレスティッジ・レコードも遅まきながらその価値に再注目し、コルトレーンが吹き込んでお蔵入りしていた音源を次々と発売し始めます。本作「スタンダード・コルトレーン」もその一つで、1958年7月11日に収録されたセッションを4年後の1962年に発売したものです。参加メンバーはウィルバー・ハーデン(フリューゲルホルン)、レッド・ガーランド(ピアノ)、ポール・チェンバース(ベース)、ジミー・コブ(ドラム)です。ウィルバー・ハーデンについては以前にサヴォイ盤を取り上げましたが、コルトレーンとは仲が良かったようで、サヴォイ盤の3枚にコルトレーンがサイドマンとして登場。お返しとばかりに本作にハーデンがサイドで参加しています。

内容はタイトル通り4曲全てスタンダード曲です。1曲目はヘンリー・ニモ作の"Don't Take Your Love From Me"。多くの歌手が歌った名バラードをコルトレーンが情感たっぷりに歌い上げます。コルトレーンのバラードの素晴らしさはこの時点で既に完成されていますね。ウィルバー・ハーデン、レッド・ガーランドのソロも彩りを添えています。2曲目”I'll Get By"はあまり他では聞いたことがない曲で、軽快なミディアムテンポで料理されています。コルトレーンがお得意の"シーツ・オヴ・サウンド"で吹きまくっています。3曲目”Spring Is Here"はロジャース & ハートの定番スタンダードですがこちらもバラードではなく、テンポ早めで演奏されています。コルトレーンの快調なソロはもちろんのこと、ハーデンもここではトランペットに持ち替えてブリリアントなプレイを聴かせてくれます。ラストトラックの"Invitation"はポーランド人作曲家のブロニスワフ・カペルが1950年に書いた曲です。スタンダード曲ですが、いわゆる甘いラブソングではなく、複雑でドラマチックなメロディを持つ曲です。後にジョー・ヘンダーソン、スタン・ゲッツら多くの名テナー奏者も演奏しますが、コルトレーンのバージョンは最も初期の演奏の一つで、かつ同曲の代表的名演と言って良いでしょう。なお、本作と同日に録音された他のスタンダード曲も後に「スターダスト」「バイーア」に分割収録されました。それらの作品もまた機会があれば紹介したいと思います。

 

コメント